5部分:第五章
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ものじゃないんだよ」
お百姓さんは二人に屈託のない笑顔で応えます。
「だからな。わしはこの黒子にジガバチを忍ばせておくからな」
「やれやれ。変わらないな」
「こりゃお孫さんが可哀想だよ」
二人は自分達のことを思い出しながら笑顔で言うのでした。二人は大人になってお百姓さんにもお孫さんができました。けれどそれ以外のことはそのままです。
それで、です。二人はそのままの泉をあらためて見てです。またお百姓さんに言いました。
「で、お孫さんもか」
「この泉で遊ぶんだよな」
「俺達がそうしたみたいに」
「そうなるよな」
「男の子だからな」
だからだと。お百姓さんも答えます。
「あんた達みたいになるな」
「そうか。俺達の後もここで遊ぶ子がいるんだな」
「それでおじさんに脅されて」
「そうしてその子も大人になるんだな」
「俺達みたいに」
「だろうな。じゃあまた気が向いたらな」
お百姓さんは笑顔のままで二人に告げます。
「ここに来てくれよ」
「ああ、それじゃあな」
「また来るからな」
健太も竜太もお百姓さんに笑顔で応えました。大人になった二人は今は何も怖がることなくお百姓さんの左手を見ることができました。あの頃はとても怖く感じたその手を。とても自然に、懐かしささえ感じてそのうえで、です。見ることができたのです。
ジガバチ 完
2012・3・30
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