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外伝
外伝《絶剣の弟子》B
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を畳んでますます速く降下しながら、寸前の思考を否定する。『受けたくは無い』のではなく、『受けてはいけない』。何故なら、今までのこのステータスはユウキさんと一緒に積み上げて来たものだからだ。自分だけのものでは無い。自分の時間だけでなく、ユウキさんの時間もまた消費することで手に入れたものだからだ。だから、また戻せば良いという話では無い。ましてやここで諦めてしまうのは論外だ。
 遂に羽音が間近に迫り、金属の剣が抜き放たれる音が聴こえる。その直後、俺は飛行の制御を手放した。

「……っ、ぅぁぁぁあああ??」

 未だ飛行のコツは掴めているとは言えない。少しでも制御を誤れば、自分でも予想出来ない方向に跳ばされてしまうのだった。今のように。
 いつもなら多少コースを外れる程度だが、今は速度が違う。狂ったように暴走しながら大きくその空域を離れて行った。体が揉みくちゃにされ、自分がどこを向いているのかが分からなくなる。それでも遠目にPKのプレイヤー達がさっきまでいたところを通り過ぎ、慌てている様子が見える。それくらい一瞬の出来事だったのだ。

「今の内に……」

 索敵スキル持ちの警戒範囲から逃れるべく、まずはそこから全力で離れる。目視で離れても索敵スキルのレーダーは誤魔化せない。特に隠蔽スキルを鍛えてない自分ではあっという間に見つかってしまうだろう。
 世界樹まで辿り着くと、その幹に沿うように円周飛行をしつつ下に降りて行く。
 世界樹には時折小さな(世界樹の規模にして、という意味で)出っ張りや、烏鷺(うろ)があり、そこがちょっとしたフィールドやダンジョンになっていることがある。それらを眺めつつ降りて行き、ハタと飛行を止めた。それらの中では本当に小さな、人が1人か2人座れるかぐらいの若木の上に小柄な人影があった。
 まさか人がいるとは思っておらず、何となく人目に付きたくなかった俺はその場でホバリングし、立ち往生してしまう。
 当然、こんな人気の無いところで自分のすぐ側で立ち止まられたら、どんなに視界が悪くとも気になるだろう。その人影は長い耳をピクッと動かすと、ゆっくりとこっちを向いた。

「……あの、何か?」
「…………え??あ、す、すみません」

 種族はシルフで女性プレイヤーだ。少し色の鈍い金髪をポニーテールに結わえ、シルフの固有武装の貫頭衣とその下にレザーアーマー。武器の全貌は見えないが、少しだけ覗いている鞘の形からして恐らく刀に違いない。

「謝ることはありませんが……それで、何故ここに?」
「えと……上でPKに襲われて、何とか逃げて、ここに」
「……それは、災難でしたね」

 シルフの女性は一瞬何かを思案し、うなづくとこちらに向かって腰掛け直した。

「ここは安全です。少し休んで行ったらどうですか?」
「え
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