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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
外伝
外伝《絶剣の弟子》B
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ライトこと南光(みなみひかる)の母親はいわゆるモンスターペアレントだった。子供心にその異常な行動に嫌悪感を抱いていた俺は外で過ごすことが多かった。
 母親が恐ろしくて、怖くて、いつかその矛先がこっちに向くのでは無いかと、常に怯えながら過ごしていた。
 その懸念は半ば当たって、あの日、あの瞬間……何もかもを壊して……俺は……自分を守る為に何もかもを忘れた。忘れた、はずだった。

 午後10時。安全装置による強制ログアウトが大体昼の12時頃だったから丁度10時間程寝てしまったようだ。
 インナーは汗でベッタリと体に張り付き気分が悪い。

「…………」

 来ていたものを脱いで洗濯籠に入れるとそのまま浴室に入る。シャワーを浴びて思考をスッキリさせると1LKの我が家を見渡す。母親から離れる為に手に入れた自分の場所で、1人で暮らすには十分な広さだ。
 たが、今日は……今だけは誰かに側にいて欲しかった。自分を見失ってしまいそうで……どうしようもなく、意味もなく体が震え、心が空っぽになっていく感覚。

「……リンク、スタート」

 倒れるようにベッドに乗ると、脇に置いてあったアミュスフィアを被り、彼の世界への鍵を口にする。
 例え、ついさっき惨めに逃げ出した場所だとしても、自分にはもうそこしかないのだから……。



 現実世界とアルヴヘイムの時間の流れは同期している訳ではないが、アルヴヘイムも偶然夜中のようだった。
 セーブポイントだった《イグドラシル・シティ》の蘇生場所は大通りのど真ん中にあるので、それなりの人通りがある。それらの人目を避けるように横の通りに入って、ひたすら細い通りに入って行った。特に目的がある訳でもなく、人混みを避け、閑散としている場所を探して奥へと進んで行った。
 歩いている内に段々と頭が回るようになって来た。まず、ユウキさんとリズベットさんには謝らなければならない。せっかく自分の為のクエストに協力してくれたのに、勝手に居なくなって何も言わないままで良い理由がない。

「何か、言わないと……」

 メッセージタブを開いて当たり障りの無い文章を滑るように連ねて行く。ものの5分で書き上げたそれは、ライトの被っていた仮面が書き上げたとても《綺麗》なものだった。

「……っ」

 ついさっきまでの自分なら、それを迷うことなく送信してしまっていただろう。だが、自分の汚くて歪な姿に気づいてしまった今は、それをそのまま送ることが出来なかった。
 ……いや、出来たとして、また強制ログアウトの憂き目を見るだけだ。
 タブを消去してウインドウも閉じると、そのまま翅を広げて空へと上がる。ただ上へ上へと限界高度まで上がって行こうとひたすらに上昇を続けた。建物はすぐに小さくなっ
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