第十五章 忘却の夢迷宮
第八話 炎の魔人
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てきたと思うんだっ! 全部っ、全部この日のためなのにっ! 優秀だと、兄さんよりぼくの方が王に相応しいと示すためじゃないかっ!それなのに―――っ! 何でっ!? 何でだよッ!!?」
シャルルの嘆きの言葉に、ジョゼフは今が何時かを知った。
父王が崩御する間際のことだ。
崩御する直前、父王は自分とシャルルを呼び寄せると、『次王はジョゼフと為す』と言い残したのだ。その時のことは今でも良く思い出せる。
―――なにせ自分がこのようになった日であるのだから。
あの時、直ぐにシャルルは屈託のない笑顔で笑いかけてきたのだ。
『兄さんが王になってくれて、ほんとうに良かった。ぼくは兄さんが大好きだからね。ぼくも一生懸命協力する。一緒にこの国を素晴らしい国にしよう』―――そう、言ったことも一字一句間違えることなく覚えている。
あの時、おれは疑いもしなかった。
笑顔でおれに向けていった言葉は全て、シャルルの本心だと思っていた。
どうあがいてもどれだけ努力しても届かない弟には、心の有り様でも敵わないと打ちのめされた。
だからこそ、あれほど憎んだ。
……憎んでしまった。
怒りと、憎しみに果てに殺意が生まれ、ついには弟であるシャルルをこの手にかけてしまうほどに……。
しかし、それは全て自分の思い込みに過ぎなかった……。
あの時の笑顔も、あの時の言葉も―――いや、それまでの全てが、自分の嫉妬を見せまいとしたシャルルの必死の抵抗でしかなかったのだ。
それに気付いてしまえば、もう、耐えられなかった。
目の奥に熱がこもり、視界が歪んだ時には、既に頬を熱い涙が流れていた。
知らず、身体はカーテンの影から姿を現していた。
蹲るシャルルの背中の背中が近づく。
気配を感じたのか、慌てた様子でシャルルが振り返る。
「―――っ、に、兄さん……」
涙に溢れた真っ赤に純血した目を大きく見開き見上げてくるシャルル。驚愕に歪む顔を慌てて振りながら、シャルルは立ち上がろうとする。
「あ、こ、これは、その、違うんだ。そう、父君の荷物を整理していたら、その、手を滑らせて……」
「もう、いい」
「だからこれは、そう、これは違うんだ」
「もう、いいんだ」
よろめきながら立ち上がったシャルルが後退りする姿に、ジョゼフは静かに頭を振った。
そして、自分でも信じられないほど優しい声でシャルルに近付き、その肩にそっと手を乗せた。
「にい、さん……」
肩に手を置かれた瞬間、ビクリと身体を震わせたシャルルであったが、直ぐに全てを知られたと諦めたのか、ダラリと肩を落として棒立ちになると、今にも泣き叫びそうな歪んだ顔をジョゼフに向けた。
「どうしても、どう
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