第十五章 忘却の夢迷宮
第八話 炎の魔人
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優れているんだぞっ。家臣だって兄さんじゃない、ぼくを支持してくれているっ……なのに何故? どうして―――どうしてなんだよっ! 意味がわからないよ全くッ!!?」
ドンッ、ドンッ、と嗚咽しながら何度も床へ両腕を振り落としていたシャルルは、床に転がる茶色の指輪―――ガリア王家に伝わる秘宝“土のルビー”を涙に濡れる目に捉えると、ゆっくりと手を伸ばしそれを手に取った。
ジョゼフもまた、シャルルが土のルビーを手に取ったのを見ると、慌てた様子で自分の手に目をやった。そこにはシャルルが手に取ったものと同じ“土のルビー”が嵌っていた。
「これは―――一体?」
ポロリと口から疑問が溢れると同時に、脳裏に声が響いた。
『ジョゼフ殿』
「「―――ッ!?」」
ビクリと身体を震わせたジョゼフだったが、直ぐに脳裏に響いた声に聞き覚えがある事に気付いた。
その声の持ち主とは―――
「ヴィットーリオ、か? そうか、貴様か―――貴様がこの茶番を仕掛けたのかッ!!」
『茶番? いいえ、とんでもない。これは茶番でも何でもない真実実際に起こったことなのです。わたくしはただ、その指輪の記憶を引き出しただけですよ』
「指輪の、記憶?」
『ええ、指輪の記憶です。リコード。これがわたくしの虚無呪文です。対象物に込められた強い記憶を―――念ともいうべきものを鮮明に脳裏に映し出す呪文です。そう、まるで過去にいったかのように鮮明に。今回のリコードはあなたがその指にはめている土のルビーに宿る記憶を引き出させてもらいました』
「は―――はは……馬鹿な、たわけたことを言うな。周りくどいことはよい。おれをとめたければ殺せばよかろうに」
『それではあなたの魂は救われないではありませんか?』
「馬鹿な……馬鹿なありえん。ありえないのだこのような事は。シャルルがこのような姿を見せるなど……そんな事は―――」
『これが嘘か真かは、あなたならばわかるのではありませんか? わたくしと同じ虚無の担い手なればこそ、これが魔法によるただの虚像であるのか、それともまごうことなき真実であるのか……』
ジョゼフはヴィットーリオに言われるがまま、感覚を研ぎ澄ませた。
鋭敏になる感覚から得たものから、ジョゼフは認めないわけにはいかなかった。
これが―――この目の前に広がる信じがたい光景が、事実過去のものであると。虚無の担い手の本能が、これは間違いなく過去に起きた出来事なのだと。
そう結論に至った時、ジョゼフの心が騒ぎ出した。
真実―――実際に起きたこと、だと?
ならば―――この目の前で泣き崩れるシャルルは、本物―――本物のシャルルなのか?
「ぼくが―――ぼくが一体どれだけの努力をし
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