第十五章 忘却の夢迷宮
第八話 炎の魔人
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ろう。
近づいてくる士郎が夢幻の如く触れれば消えてしまうのではと、ジョゼフが半ば思考停止のまま手を伸ばすと、
「―――っ、来いっ」
何かに気付いたかのようにドアへと顔を向けた士郎が、手を伸ばしてきたジョゼフの手を取り窓の傍へ駆け出した。抵抗する間もなく士郎と共にカーテンの後ろへと隠れたジョゼフは、直ぐに士郎の行動の意味に気付いた。
士郎とジョゼフがカーテンの影に隠れた直ぐ後、ドアの向こうから足音が響いてきたのだ。
足音がドアの前で止まると、ドアがゆっくりと広がり始めた。
その時、カーテンの影でその様子を見ていたジョゼフの未だ状況が掴めず揺れていた目が大きく見開かれた。
「あ、りえ、ない」
「…………」
軽く開いたドアの隙間から身体を滑り込ませ、周囲を警戒しながらドアを後ろ手で締めて執務室へと入室してきたのは、
「っ―――シャルル」
シャルルであった。
己がその手に掛けた男―――弟の姿であった。
シャルルの姿を目にした時、既にジョゼフにはそれだけしか目に映らなかった。
思考も疑問も全て停止し、目の前にいるシャルルにしか集中できない―――シャルルの事しか考えられない。
何故―――シャルルは父王の執務室にいるのか?
何故―――何故、見たこともない険しい顔をしているのか?
何故―――何故―――何故―――………。
幸いにもシャルルは士郎たちに気付くことなく父王の執務机へと真っ直ぐ歩いていく。
シャルルは執務机の前に立つと、突然机の引き出しを乱暴に引き出すと床へと叩きつけた。
厚く柔らかな絨毯でも受け止められない衝撃だったのだろう、ゴンッ! という音と共に引き出しが割れると、中身が辺りに散らばった。絨毯の上には父王の宝石や勲章、書類等が無秩序に散らばっている。茫洋とした眼差しでそれらを見下ろしていたシャルルだったが、ガクリと力が抜けたように膝を着くと、その上に突っ伏し低い嗚咽を漏らしだした。
その姿を、ジョゼフは呆然とした目つきで見ていた。
泣いている。
泣いているのだ。
あのシャルルが。
一度も見たことのない顔で、声で、泣いている。
何故?
どうして?
今にもカーテンの影から飛び出して、シャルルが涙を流す理由を問い詰めたかった。
いや、既に身体は前のめりに、カーテンの影から大部分が出ていた。
しかし、足を一歩踏み出す前に、シャルルはその理由を口にした。
「何故―――何故なんだ? どうしてぼくじゃない。ぼくじゃないんだっ」
踏み出そうとした足がピタリと止まった。
「父さんっ。何で、何でなんだよ。ぼくが王さまにするんじゃなかったのか。おかしいだろ? 兄さんと違ってぼくは魔法も学問も全部
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