第十五章 忘却の夢迷宮
第八話 炎の魔人
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ジャン……
ジャン・ジャック……
聖地を
―――聖地を目指すのよ
わたしは恐ろしい秘密を知ってしまった
誰にも話せない
誰も信じてはくれない
ああ
わたしはどうすればいいのだろう
聖地に向かわねば、わたしたちは救われない
でも、聖地をエルフから取り返そうとすれば破滅してしまう
可愛いジャン
わたしのジャン・ジャック
母の代わりに聖地を目指してちょうだい
そこには救いの鍵がある
やっと見つけた希望がある
ジャン
ジャン・ジャック
わたしの可愛いジャン
聖地へ……
そして彼の地にいる―――
「……ここは?」
突如茶色の光に包まれたかと思えば、目の前には見覚えのある光景が広がっていた。
それはヴェルサルテイル宮殿の本丸―――グラン・トロワにある―――正確にはあった執務室であった。
そう、あった、だ。
執務室に置かれた家具の種類、並び等から今現在のものではないのは明らかであった。
この様子からすれば、父王が崩御する直前のようである。
間違いはない。
数年が経っていようと、見間違える筈がない。
これまで幾度も夢見ていた光景であるのだから……。
「一体、どういうことだ?」
自分が火石に向かって杖を振ろうとした瞬間まで覚えている。
そして杖を振り切る直前に、茶色い光に……。
「―――それは俺も聞きたいんだが」
「―――ッッ!?」
背後から聞こえた声に慌てて振り返ったジョゼフの前には、腕を組み窓際に寄りかかった士郎の姿があった。
「……ガンダールヴ」
「その様子だと、やはりお前の仕業というわけでもないようだな」
士郎は窓際から身体を離すと、ゆっくりとジョゼフへと向かって歩き出した。
「幻術、と言うには余りにもリアル過ぎるな……」
「オレは夢でも見ているのか?」
ジョゼフは近づいてくる士郎を前に警戒する様子も見せず自嘲気味に言葉を吐き出した。
自分諸共全てを燃やし尽くさんとした瞬間、光に包まれ気がつけば懐かしい父の執務室にいて、そこには自分を追い詰めた敵の姿があった。
ここまで混沌としたものは夢でも滅多にはないだ
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