三節・会議の場にて男は告げる
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あの一件とは数週間前に遡る。
とある一人の男が、ゲームシステムから外れたモノは自動的に意識を回復するのだと、グザからすれば余り良く分からない持論を展開し、アインクラッド端の柵から身を乗り出し、宙空へ躍り出たのだ。
……その後、《黒鉄宮》の碑に刻まれたのは、無慈悲な横ラインと『死因:高所落下』の文字のみ。
しかしながら、この傍目簡単に見える決着に身を任せる者が増え、死亡原因がモンスターの所為ではなく自分自身の所為となった者がいるのも、眼を背けられない事実なのだ。
「それに今ベータテスターを攻めてどうするんだわな?
此処で溝作れば足並みがそろわんし、せめて第一層をクリアし、希望を皆に届けてから、改めてこの一件に付いてキッチリ白黒分付ければいいだけやね。
それかお前さんが何か、糾弾以外で行動を起こせばいいだけじゃないのよ」
「ぐうっ……」
後ずさるまでに何も無いのか、キバオウはただ呻くのみ。
見かねて、後ろからディアベルが声を掛けた。
「糾弾したくなる気持ちはわかるよキバオウさん。俺だって、何度も死にかけながらやっとの思いで此処まで辿り着いたんだ……正直、ちょっと恨み節を抱いた事もある」
「……」
「けど、それで袂を分かったり、魔女狩りの様な騒ぎを起こしたら本末転倒じゃないか! 個々だけでなく、今は背後にいる人たちの事も考えなきゃいけないんだ」
「…………わかった、ここは退いといたる。ワイの考えも存外甘かったみたいやからな……けど! 終わったらハッキリさせてもらうで!」
「ああ、いいやね。正直、ベータテスターにも不可解な点は多いのよ。だから全然オッケーだわな」
「平等主義って訳かい?」
「いや、粗が目立つだけだわな」
そこで会話が終わり、攻略会議に戻っていく。
……と言ってもまだ情報が足りない為、現時点では現状確認と今後の予定のみ組んで解散となる。
波乱を含んだ風は、まだまだ吹きやむ事を知らなかった。
「はぁ、はぁ……クソっ! 誰も居ねぇし!? やっぱオレ、攻略会議に遅れたのか!? ちくしょうっ!!」
……その数分後に、何やら喚いている少女が居たが、どれもいなくなったこの場で律儀に応答する者など、居ないのであった。
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