第3話
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手には手袋。服は何枚か重ね着している様子。まるで肌を少しでも見せることを拒むかのようである。SAOにはそのゲームの内容もあって、奇妙な格好を好むものも少なくはないが、目の前のそれはオシャレ目的ではないように思う。どちらかといえば、姿を隠すことだけを目的としているような。
その姿は、最初見たときに思ったよりも黒ではなく、寧ろ錆色に近かった。だがやはり目の前のそれの印象は黒である。何故か懐かしく思った。自分でもわからない、何を。残念ながら少年は、宇宙に行ったことはない。宇宙になったこともない。少なくとも、記憶には存在しない。
しばらくの間黒の姿をぼんやりと眺めていると、黒が何かを求めるようにちらりとこちらを一瞥、すぐに手に持っていた短剣を構え直す。そして少年の周りのネぺント少しでも減らすべく、敵を自分の方へと引きつけ始める。やがてネぺントたちは黒の存在を認識したらしく、半分ほどであったが、彼の方へと引き寄せられていった。少年ははっとする。やっと、自分が自分だと認識できた。それまで胸の奥に押し込めていた恐怖などの様々な感情が一気に溢れ出し、思わず腰が抜けそうになるのを、何とか踏ん張って耐える。黒は、俺を助けてくれたのだろう。少年は思った、自分だけならともかく、他のプレイヤーを巻き込んでしまったなら、諦めるわけにはいかないと。感情云々の話ではない。人として、の問題だ。それに、感情の方もかなり良好だ。黒の存在を認識してから、負の感情が自分の心から殆ど感じられなくなっていたのだ。
改めて今の状況を確認する。黒がある程度引き受けてくれているため、随分と楽になった。今目の前に見えるのは、六体。自分の目がおかしくなければ。これなら勝てる。終わりが見える。そう思えば随分と気分が明るくなっていた。心なしか体も軽い。何故か安心している自分がいる。視界にかかっていた靄も、いつの間にか消えている。
体の動きが大分良くなったと感じていた。相手の攻撃が見える。躱せる。自分の体と頭が繋がっている。単調なネぺントの攻撃如き、今の少年にはちょっとした脅威にすらならない。ネぺントの蔓伸ばし攻撃をひらりと避け、側面に回り込み、弱点の部位へソードスキルを叩き込む。その剣は目的を持ったものだ。今ではなく、先を見据えている剣だ。それはもしかしたら、剣士としては相応しくないのかもしれない。だが少年の剣は、きっとどこまでも気高かった。
勢いを利用し、一度敵と距離をとる。硬直が解けたらすぐ、二体目の敵へと向かう、斬る。その繰り返し。
少年が相手にしていた六匹のネぺントがポリゴンへと姿を変えるのに、そう時間は掛からなかった。
「終わった……」
最後の一体を屠っても、少年はすぐに気を抜くことが出来なかった。少し震える手で
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