第3話
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を駆け回り、彼を探した。
それは現実世界であればきっと声が枯れてしまっている程、怒号を挙げている人よりも、泣き叫んでいる人よりも大きく、大きく声を張り上げて何度も彼の名前を連呼した。
少年は少し期待したのだ。デスゲームが始まって、それはとても恐ろしい事だ。なのだが、アバターも解除され、現実世界と言っても過言ではないこの世界であれば、彼をもっと知ることが出来るのだと。彼とは親友だと思っていたし、実際そうだったと信じている。だが少年は、マナー違反だと知っていても、実際に会いたくなった。偽りのない、本来の姿で。だからデスゲームが始まった時、恐怖や怒りと同時に、不謹慎ながら少しばかり嬉しさを感じてしまったのだ。
だが彼は見つからなかった。どれだけ大声を出しても、その声に、自分でもわかる程の必死さが籠っていても、彼が少年の前に姿を現すことはなかった。
もしかすると彼はこの世界に居ないのかも知れない。用事か何かで、この世界に来ることが出来なかったのかも。もしそうだとするなら、彼の親友としてはそれを喜ぶべきことなのだろう。こんなゲームに参加せずに済んだ。命を落とす心配はないのだ。だが少年自身としては、それを素直に喜べなかった。
もしかしたら、親友と言ったのは嘘だったのではないかとか、そもそも彼の存在は彼の言った通り、俺の作り出した幻ではないかとか、一々そんな考えばかりが頭に次々と浮かんでくる。何も考えまいとしても、止まらない。それは次第に少年の朽ちかけた心を今、負一色へと染め上げようとしていた。そんな自分に気がつき、次に抱く感情は、憎悪。それも、自分に対する。俺がこんなのだからだと。俺がろくでなしの糞ったれ野郎だから、あいつは俺を見放したんだと。只管に、自分を憎む。
「あぁ、糞!」
唯々、剣を振るうのだ。最早目的など覚えていない。敵のHPなど、己のHPなど知らん。剣を振るうことに、敵を切ることに意味がある。否、その意味さえもが曖昧である。段々と、自分が何をしているのかがわからなくなる。視界に、何色かわからない靄がかかる。自分の思考が、現実と切り離されてゆく。まるで、必死に剣を振るう人間を、スクリーン越しに眺めているような、妙な感覚に陥る。
スクリーン越しに見るその人物の振るう剣にはもう、技術のかけらも感じられない、無骨なものへと成り下がっていた。見ようによっては、まるで早く倒されたい、諦めているようにも見える。そんな様子を、ぼんやりと他人事のように眺めていた。
のろのろと自分のHPに目をやる、既にゲージが殆ど残っていなかった。どうやら少年の考えは正しかったらしい。だがどちらにしろ、もう抗う気力さえ残っていない。それに、少年の脳みそはもう、抗うという考えを導き出しさえしなかった。ネぺントの蔓が迫る。
「ここまでか…
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