第3話
[5/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
それはもう、今まで溜め込んできたものを全て出し切ろうとしているかのように、笑い続ける。ただ只管に。それで、少年が笑うのを見て更に恥ずかしいそうにする彼の姿が、また可笑しい。ああ、どうして恥ずかしそうにする、こちらは感謝しているというのに。ああ、そうか、自分が笑っているからか。と、またそこで笑いが込み上げてくる。
しばらくして、やっと笑いが収まる。笑い過ぎたせいか、少し息が苦しい。目尻に溜まった涙を拭う。深呼吸をして息を整える。よし、落ち着いた。少年は、まだ少し顔が赤い彼の方に向き直った。
「ありがとな」
そう言った少年の顔には、心の底からの笑顔が浮かんでいた。もしかしたら、人生の中で一番綺麗なものだったかもしれない。自分の顔で無いことが少し残念であるが。その時の彼の、ぽかんと口を半開きにした間抜け面がなかなか見ものだった。
その時から少年は色々考えるようになった。自分のこと――思えば、自分のことなのにわからないことが多すぎる。彼と自分の違い。彼の考え全てを肯定するのではなく、自分の考えとの違いを知るのだ。少年は幼い頃、自分の両親が本当の親では無いと知ったとき、急に彼らが遠く感じた。自分が彼らのほんの一部しか知らないということを感じ、それが怖くなった。人はお互い理解できると、そう思っていたから。少し前までそうだった。怖かったから、考えないようにしていた。だが今は、それは違うような気がした。きっと大事なのは、理解することではなく、理解しようとすることなのだろう。
日が経つにつれ、少年は自分が自分らしくなるのを感じていた。笑顔を見せる数も増えた。疎遠になっていた妹との関係も、少し良くなったと思う。それもこれも彼の御蔭だった。少なくとも、彼が機会をくれたから、彼の、ちょっと捻くれた考えを聞いたから、自分を見つめ直すことが出来たのだと思う。
少年にとって、彼は恩人だった。困ったとき、彼に相談したとき、彼はいつも正しい答えではなく、彼なりの答えをくれた。それが自分の考えと違うときだって、勿論あった。だが、そうして色々考えていると、自分はこんな人間なんだと、知ることが出来たのだ。βテストの期間が終了し、本サービスが開始するまでの間、はっきり言って結構辛かった。再会するのを心待ちにしていた。また彼と、色々話がしたい。例えそれがくだらないことでも、少し下世話な話でも、最近では学校でできる人も増えてきたが、やはり彼とするのが一番だった。きっとそれを親友と言うのだろう。きっと彼もそう思ってくれている筈だと、少年は自信があった。もしかしたら、このゲームをプレイすること以上に、彼との再会を楽しみにしていたのだ。
だが彼は今、少年の隣にはいない。
茅場晶彦によるデスゲーム宣言、それが終わってすぐに、少年はプレイヤーでごった返した始まりの街
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ