第3話
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かしたら何か理由があって、俺に自分の姿を見せたくなかったのかもしれない。もしかして、俺の知り合いだったりとか。
いや、違う。キリトはその説を否定する。彼だけでなく、俺もアバターが解除されているのだ。つまり彼は、俺のこの姿を見てキリトだとわからなかった筈だ。そう考えるキリトの姿は、元のアバターとは似ても似つかない、華奢で女顔の少年である。きっと彼は、たまたま死にかけている少年を見つけ、助けただけなのだろう。それがキリトなどと知らずに。
しかし、全身を隠す理由は何だろう。顔に大きな傷や火傷の跡があるとか。或いは、失礼ながら、余程の不細工であるか。否、それなら顔だけ隠せばいい筈だ。だがハヤトは全身を、それも地肌のほんの一部分さえも見せないようにしていた。全身に広がる大怪我の跡でもあるのだろうか。
考えてもわかりそうでない。どちらにせよ、彼が他人に知られたくないことがあるのは確かだと思う。そしてそれが、彼自身の姿に関係しているということも。だがその結論を導き出したキリトは、少しばかり憤っていた。例えお前がどんな姿をしてようが、俺が受け入れないわけがないのに、と。
正直なところ、キリトはまだ、自分が元の世界に帰れるのは難しいと思っている。
だが少なくとも、この狂った世界で生きる理由が一つできたのだ。ハヤトと再会し、またパーティーを組む。今はその目標があればいいかと。そう考えることにした。
彼と再会しただけなのに随分と、気分が明るくなった。例え逃げられたとしても、いい。また見つけて、今度こそ話をしようと心に決めた。
とりあえずクエストを終えよう。手に入れた「リトルネぺントの胚珠」を届けるため、村へと戻る小道を進む。森を抜ける際にふと、自分を罠にはめた元βテスターを思い浮かべる。抱いたのは、感謝の気持ちだった。自分とパーティを組んでくれたことに対する。自分を騙し、死ぬ直前へとまで追い込んだ人物に、キリトは確かに感謝の念を抱いていた。彼と組んでいたとき、自分の心細さが軽減されていたのは間違いなかったから。
キリトはゆっくりとした足取りで、村へ向かって歩く。彼と、俺と、ハヤトと、三人でパーティを組んでみたかったなぁと、そんなありえない未来を想像しながら。
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