第3話
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
況への苛立ちか、デスゲームへの怒りか、或いは――。
思わず奥歯を噛みしめる。このゲームは痛みを筈なのに、何故か痛い、どの部位かはわからないが、広い範囲だ。その、やり場のない怒りをぶつけるかのように、目の前のネペントに剣を叩き込む。少年の怒りが体現されたかのような、荒々しい剣である。殆ど無意識だった。目の前に斬るべきもの、手には剣、ならばと、まるで当たり前の様に敵を斬り付けた。感情は兎も角、それは立派な剣士だった。その一撃で残り僅かだったリトルネぺントのHPがゼロとなった。途端にその身は半透明になり、青白く輝く。次いで、ポリゴンの破片となり、破裂音と共に四方へと散りゆく。
だがそれでも十匹、それ以上、まだ居る。次の敵の攻撃が少年に迫る。まず初めに右側の蔓を伸ばしての攻撃だ。動きは単調。何度も見てきたので簡単に予測できる。にも関わらず、身体が動かない。頭では理解している筈なのに、一瞬、自分が今此処に居るのを忘れていた。そのせいで反応が遅れ、攻撃が身体を掠めてしまう。
先程からこういったことが多い。少年は、自分は疲れているのだろうと思った。或いは、戦う気力を失っているのか。いずれにせよ、このままだと拙い状況なのは明白である。
一向に終わりそうにない戦い、否、恐らく自分の方が先に力尽きるであろう。こうしている間にも、少年のHPは刻一刻と減少している。少年は察していた。このままだと死ぬ。――それもいいかもしれない。
少年の頭にそんな考えがよぎった。自分は間違いなく重症だ。少年は疲れ切っていた。間違いなく重症だった。もしこの戦いに生き残ったとしても、これから先、誰かがこの浮遊城を百層まで攻略しなければ現実世界に帰れない。少年はこの時点で、帰れる可能性を殆ど諦めていた。
はっ、何が現実。何が異世界。どうせ痛みは感じないし、死ぬ時は一瞬。こんな苦しみから逃れられるなら、ここで諦めた方がいいのかもしれない。あぁ、なんとなくこの感情の正体がわかった気がした。これはきっと心細さだ。ここで出会った元βテスターと臨時でパーティーを組んだのも、感じていた心細さを紛らわすという目的が含まれていた。その結果、見事に罠にはめられたのであるが。その存在も、もう感じられない。元βテスターが居なくなって最初に感じたのは、自分には無縁だと思っていた、孤独の辛さだったのだ。自分を罠にはめた相手であるにもかかわらず。
「孤独、か」
ポツリと呟く。少し前なら、1人でもこんなに辛い思いをしなかった筈だ。それが悪い変化なのか良い変化なのかなんて、自分にも分からないが。
幼い頃に自分の親が本当の親ではないと知って以来、他人との距離感を掴めないでいた。大人にも子供にも、男にも女にも、この人は誰なのだろう。この人とは何なのだろうと、そう疑問に思うのだ。友人と恋人
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ