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逆さの砂時計
異国の大地 2
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私まで一緒に評価しないでください」

 (はなは)だ不本意です。

「いやいや騒がしくしてすみません。いけませんね。研究のことになると、ついつい脱線してしまって。お二人共、こちらを見ていただけますか?」

 マクバレンさんが、再度一礼してからウミウシを律儀に水槽へ戻すと。
 今度は自身が背負っていたバッグに手を掛け。
 その中から、小さな箱を一つ取り出した。

「…………え!?」

 手のひらに乗せられる大きさの、白く四角い箱の中。
 柔らかく埋めた薄紅色のクッションに横たわっているのは……

「私達が彼女達を拾ったのは、今から一ヶ月ほど前になります。研究施設で育てていた花の下で、ぐったりと横たわっていましてね。ほら、ご覧の通り明らかに現在確認されている生物のどれとも違う容姿でしょう? しかも、人間の言葉が通じる。彼女達から話を聴きまして、これは絶対なんとしても助けなければと、希少種探査の名目で慌てて国を飛び出してきたのですよ」

 緑がかった金色の長い髪、陶器のような白い肌、指が無い足先。
 リースとまったく同じ特徴。
 リースとまったく同じ背格好。

 リースに確かめてもらうまでもない。
 彼女の同族……精霊だ。

「私達には理解できませんでしたが、関所で並んでいる時に、このふたりが綺麗な力を感じると言って貴方を指したものですから。もしかしてと思い、声を掛けさせていただきました。先ほどと今の反応からして外れではないと推測しますが、改めて。そこに、貴方の胸元に精霊が居たりしませんか?」

 目の前に差し出された、二体の弱々しい精霊達。
 今は体を丸めて互いに寄り添い、ぐっすりと眠っている。

「……彼女達のことは、誰にも?」
「もちろんです。あ――……と、これはまあよく誤解されるんですけどね。私達生物学者の第一目的は、種と多様性の安定保持、世界の繋がりと生命の基盤の実態解明であって、社会や文化の発展への応用もそれは重要ですが、私達の感覚で言えば副産物なんですよ。危機に瀕してる者をこちらの都合で更なる危険に追い込むのは、まったくもって本意ではありません」

 良かった。
 研究者とは、知的好奇心を満たす為なら手段を選ばず結果を獲ようとする傍若無人な人種だと思っていたのだが。
 必ずしもそういう人間ばかりではないようだ。
 しかし。

「よく、彼女達が貴方達と言葉を交わしてくれましたね? 精霊族は人間を激しく嫌悪していると聞いていますが」
「ええ。最初の頃はそれはもう、寄るな触るな汚らわしいと大変でしたよ。ただ、彼女達も相当弱ってましたからね。そこを巧みに突きまして。強引に説得させてもらいました」

 リース曰く、精霊の人間嫌いは相当根が深いらしい。
 特に、他の生命を省みな
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