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渦巻く滄海 紅き空 【上】
九十一 交戦模様
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ナルの病室に花を飾り、そのままリーの病室へ向かった彼をシカマルは尾行した。
【影真似の術】で動きを封じたはずなのに、逆にシカマル自身が術に掛けられたかのように動けなくなったあの一件は、今でも鮮やかに思い出される。

言葉一つ取っても不明慮で定かではない。言動全てが不明であり、不可解な点が多すぎる存在。
遙か高みに座しているかのような謎めいた人物。
あの金髪の少年――うずまきナルトの存在が頭から離れない。

特に中忍試験中彼と行動を共にしていた多由也が今此処にいるという事実は当然、シカマルにある仮説を立てさせる。
「という事は、あのナルトとかいう奴も大蛇丸の…――」

それ以上シカマルが言葉を紡ぐ事は叶わなかった。
何故なら、寸前とは比べものにならないほどの殺気をその身に受けたのだから。


「―――てめぇ、今なんつった…」
突き刺さるような殺気。
何が彼女の怒りの沸点だったのか。突然激怒した多由也の膨大な殺気がシカマルを襲う。

思わず怯むものの、「お前が大蛇丸の部下という事は、そういうことなんだろ?違うのか?」とシカマルは口早に問い質した。
怒りで我を忘れている相手ほど口を滑らせる。その好機を逃してなるものか。


怒りでわなわなと震える多由也の指先を視界に捉えつつ、シカマルは矢継ぎ早に質問しようとした。口を開く。
刹那、彼の身体は凍りついた。




「それ以上、虐めてやらないでくれるかい?」



多由也の殺気を浴びた時より遥かに絶大な緊張が全身を強張らせる。同時に、多由也の殺気が一瞬で霧散した。
耳元で囁かれる凛とした声音は、正にシカマルの脳裏を占めていた存在。


「ど…ど、うして此処に…」
怒りからではない震える指先で多由也がシカマルの背後を指差す。
二人に多大の影響を与えた張本人が「人を指差してはいけないよ」と空々しく苦笑する様をシカマルは頭の片隅で聞いた。遠ざかりそうになる意識と身体を奮い立たせ、背後を振り返る。
けれどその時には後ろには誰もいなかった。

代わりに、多由也の隣から聞こえた声に、シカマルもそして多由也本人も、一斉に声がしたほうへ顔を向ける。
反して、シカマルが身につける中忍ベストに目を留めた彼は口許に笑みを湛えた。

「中忍になったんだね。おめでとう、シカマル」


何時の間に移動したのか。いやそもそも、いつからいたのか。
賛辞を送るこの存在は、己自身がこの切迫した事態を引き起こしている事に気づいていないのだろうか。いや、気づいていながら、いっそ暢気なほど穏やかに、彼は微笑んだのだ。
眼に鮮やかな金の髪を靡かせて。

「ナルの見舞い時以来、かな?」



敵対するシカマルと多由也の間で静かな笑みを浮かべるのは……彼
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