九十一 交戦模様
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んたらやってるからだ、この馬鹿」
すぐ耳元での兄の呆れた声に、左近は「兄貴はせっかちなんだよ」と唇を尖らせた。
「戯言はいい。さっさとやるぞ」
「はいはい」
兄弟の軽い応酬。
共に残忍な性格である彼らは如何に陰湿な方法で相手を甚振るか考えていた。
一方、【変わり身の術】で難を逃れたいのに、キバと赤丸が駆け寄る。
いのの無事を確かめた後、キバは険しい顔で空を見上げた。
「早くサスケを追い駆けなきゃならねぇってのに…っ」
「それなんだけどね、キバ・赤丸」
いのの唐突な提案に、キバが眼を剥く。赤丸が心配そうに、くぅんと鼻を鳴らした。
「シカマルの援護に向かってくれる?」
一人と一匹の怪訝な視線を一身に受ける。左近を睨むいのの瞳には、揺るぎない決意の色が窺えた。
「アイツの…いいえ、」
一つの身体に二つの心を持つ敵を真っ直ぐに見据えて。
「アイツらの相手は私がするわ」
「サスケはどうした?」
「さぁな?」
離れ離れとなったいのとキバの安否を気遣いながらも、シカマルは目の前の人物に問い掛けずにはいられなかった。
キバの嗅覚が正しければ、彼女は君麻呂達よりも先にサスケを連れて国境へ向かったはずだ。
それが現在、シカマルの前にいるのは何故か。
サスケ不在の理由を鋭く問い質したところで、返ってくるのはしらばっくれた顔。
シカマルとて相手が素直に答えてくれるはずないと理解していた。軽く肩を竦めてみせる相手の一挙一動を注視しながら、瞬時に思考を巡らせる。
(――とにかく、今は状況整理だ)
周囲に視線を這わせ、シカマルは冷静に頭を働かせた。
すぐにでもキバといの、二人の援護に向かいたいところだが、そのような行為を見逃すほど目の前の相手は優しくない。
第一、背後にいるキバ達のほうへ向かうという事は敵に背を向けると同義。迂闊には動けない。
「何をちんたら考えてやがんだ、このクソヤローが」
見た目に反して毒舌を吐く彼女に、シカマルはひっそりと眉を顰めた。
中忍第二試験の『死の森』にて、サスケと対等にやりあい、尚且つ予選試合でチョウジを一瞬で打ち負かした。
中忍本試験には何故か参加せず、代わりに三代目火影を結界内に封じ、『木ノ葉崩し』の一端を担った。
そして今回、サスケを大蛇丸の許へ引き入れようとしている音の忍び――多由也。
「やっぱ大蛇丸の部下なんだな」
「ああ?」
シカマルの呟きに、不機嫌そうな声音で多由也が眉を吊り上げる。しかしながら彼女の暴言よりもシカマルの脳裏は一人の気掛かりな少年に占められていた。
最後に会ったのは、ロック・リーの病室内。
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