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逆さの砂時計
異国の大地
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ある。
 その為、今まで居た国とは、公用語も公用文字も、主要宗教(国教)も違う。
 理解できないのは当ぜ………… ん?
 しかし、よくよく考えてみればベゼドラはそもそも神代の存在だった筈。

「私達の国の言葉や文字は、何故か通じてますよね? 貴方もリースも」

 自分の隣で興味深げに商品を見渡している真っ黒な悪魔に顔を向ければ。
 彼も ん? と眉を寄せた。

「いや、あれは人間の標準語だろ? 文字は違ってたから、お前が持ってた教典で覚えたが」
「人間の標準語、ですか?」
「私は文字は読めないけど、クロスの……国? で聞いてた言葉は、昔からほとんど変わってないの。使い方や単語の意味はちょっと変化してるけど、眠りに就かれる前のアリア様が教えてくださった響きとよく似ているのよ。だからクロスと話が通じるのは少し嬉しかった。逃げてた時、たまに遠くで喋ってる人間を見かけたけど、最初は言葉なのかどうかも判らなかったわ」

 ポケットの中から、リースが潜めた声で疑問に答えてくれた。

 アリアが眠る前。
 つまり、数千年も前から、あの国の言葉に大きな変化はなかった?
 エルフ族やリース達人外生物とも普通に話せているのは、そのおかげか。
 ただ、文字だけは変わっていたと。

 面白いな。
 どういう経過でそうなったのだろう。
 アリアや悪魔は眠っていたから知らないとしても、リースは
 ……泉からずっと離れてなかったのかな?
 異種言語を理解できなかったというなら、多分そうだ。
 こうした変遷(へんせん)を見届けた人物がいないのは、少し残念かも知れない。

 あ、レゾネクトは除く。
 これまでの流れからして、彼なら知っていそうだし。
 なんとなく、尋けば教えてくれそうな気もするが。
 のんびりと会話を楽しみたい相手ではない。

「私も、こちらの国の言葉はあまり得意ではないのですが、少しずつ慣れるしかありませんね」
「言葉に慣れるより、泉へ向かうほうが先だろ。とっとと行くぞ」
「……ええ」

 露店を一通り見終わり、用事を済ませた後。
 入国の列へと歩く速度を速めるベゼドラの数歩斜め後ろに付いて行く。

 それにしても、本当に賑やかだ。
 周囲を見渡せば、自分達とは逆に進む人のほうが断然多い。
 中には宗教関係者と思しき団体も見えた。

 聖職者が集団で国境を越えるなんて珍しい。
 集会でもあるのだろうか?
 それなら解る。
 要職に就いた聖職者達は、手持ちの情報を交換する為、たまに周辺国から一ヶ所に集まって会議を開くのだ。
 小規模な会議は大体不定期だし、いつどこで行われても不思議はない。

 皆さん、ご苦労様です。

「関所を離れたら跳んでいきましょう。リースは道案内
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