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第一章
迷子
真史はお母さんと一緒に買い物に出掛けていました。それはいつものことでした。
けれどこの時は違って。お買い物にあるものを連れてきていました。それは。
「ねえ真史」
お母さんは自分の子供に顔を向けて声をかけました。この時真史はお母さんのすぐ後ろでにこにことしていました。
「本当にいいの?ジロ連れて来て」
「いいじゃない。だって僕ジロと一緒にいたいもん」
自分が手綱を持っているその白く小さな子犬を見て笑顔でお母さんに言うのでした。
「だから。いいでしょ?」
「確かにジロの散歩になるけれど」
お母さんは息子の言葉を聞きながらとりあえずといった感じで言いました。
「けれどね。気をつけなさいよ」
「車を?」
「そう、車よ」
やっぱりお母さんが言うのはこのことでした。
「車には本当に気をつけなさいよ」
「僕もジロも気をつけてるもん」
「ワン」
ここで真史だけでなくジロもお母さんに応えてきました。明るい鳴き声でした。
「だから大丈夫だよ。お母さん気にし過ぎだよ」
「気にし過ぎだっていうのね」
「そうだよ。大丈夫だって」
また言う真史でした。
「だからジロ、行こう」
「ワン」
今度は真史の顔を見上げて鳴いて応えたジロでした。そうして彼等は笑顔で頷き合うのでした。お母さんはそんな息子と愛犬を見て仕方ないわね、といった顔になって言うのでした。
「わかったわ。それじゃあね」
「うん。それじゃあ?」
「ちゃんとしておくのよ」
こう一人と一匹に言いました。
「ちゃんとね。お母さんがスーパーで買い物をしている間は」
「その間は?」
「ジロと遊んでなさい。それで変なところに行ったりしたら駄目だよ」
「うん、わかってるよ」
ここでも笑顔で頷く真史でした。
「それはね。じゃあお母さんが買い物してる間駐車場のベンチのところにいるからね」
「すぐ終わるからね。お菓子も買ってあげるから」
「お菓子も!?」
「アイスクリームがいい?それともチョコレートかしら」
「両方」
自分の顔を見て首を少し右にやって尋ねてきたお母さんに対して言うのでした。
「両方食べたいけれど駄目かな」
「いいわ。それじゃあチョコレートがたっぷりと付いたアイスをね」
それを買うと言ったお母さんでした。それでいいわよね」
「うん御願い。じゃあ僕ずっと待ってるから」
「ジロには。ビーフジャーキーね」
ジロにはそれだというのでした。
「それ買ってあげるわ」
「ワン」
また明るい鳴き声で応えるジロでした。真史もジロも笑顔でお母さんを待つことにしたのでした。こうして彼等はお母さんを待ってスーパーの駐車場のベンチのところで楽しく遊ぶのでした。
けれど
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