暁 〜小説投稿サイト〜
新説兎と亀
4部分:第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後

第四章

「かけっこの時の亀さんと同じこと言って」
「またどうしてなの?」
「勝負ってのは勝ち負けがやっぱり大事だよ」
 兎は泳ぎながら皆に言うのでした。
「けれどそれ以上に」
「それ以上に?」
「何かあるのかな?」
「あるよ。最後までやる」
 こう言いました。
「最後までやることが一番大事なんだよ」
「!?そうなの?」
「そういうものなの!?」
「それ、やっと今わかったけれど」
 兎はまた皆に言いました。
「亀さんとかけっこしてね」
「何か話がわからないけれど」
「ねえ」
 けれど皆はまだ兎の言葉の意味がよくわかりませんでした。
「勝つことが目的じゃないっていうこと?」
「それよりも最後までやり遂げるってことかしら」
「そうなんだ。最後までやり遂げないと」
 また兎は言います。
「駄目なんだ。だから僕だって」
 言いながら頑張って泳ぐのでした。
「泳ぐよ、最後まで」
「そうなの。じゃあ頑張って」
「最後までね」
「うん、やるよ」
 こうして兎は勝負がついても頑張って泳ぐのでした。そうして最後まで泳いでゴールまで辿り着きました。そうして辿り着いたそこには亀がいました。
「お疲れ様」
「うん」
 兎はゴールに着いてまず亀と言葉を交えさせました。
「最後まで泳いだよ」
「おめでとう」
 彼等が言うのはやはりこのことでした。
「頑張ったね、最後まで」
「亀さんこそ」
 兎は上にあがってそのうえでまた亀に言いました。
「かけっこで頑張ったね」
「だって。それが当然だからね」
 亀はにこりと笑って兎に答えました。
「だからだよ。最後までやってこそだから」
「そうだよね。やっぱり最後までね」
「やらないとね。やったことにはならないからね」
「うん、本当に」
 こう話を交えさせながら笑みを浮かべ合っています。
「じゃあお疲れ様」
「これでね」
 笑顔で別れます。それで終わりでした。
 けれど二人は満足していました。お互いがそれぞれ勝ったことにではなく最後までやり遂げたことに。そのことに満足してそのうえで帰るのでした。
 それを見た皆は。やっとわかったのでした。
「そうか、最後までなんだな」
「何でも最後までやってこそなんだな」
 二人がいなくなったその場を見て言い合っています。
「皆で頑張っていかないと駄目なんだな」
「やり遂げないと」
「そういうことなんだな。いや、兎さんも亀さんも」
「凄いよね、いや立派だよね」
「そうだよね」
 皆こう言っていきます。
「どっちも。じゃあわし等も」
「うん、頑張ろう」
「最後までね」
 兎と亀にそのことを教えてもらった皆でした。それからこの山では皆何事も最後までやり遂げるようになりました。何でも最後まで。
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ