第二百二十二話 耳川の戦いその十一
[8]前話 [2]次話
「黒と闇は違う」
「黒もまた色ですな」
「そうじゃ、しかしな」
「闇は色ではない」
「闇は闇じゃ」
それでしかないというのだ。
「まさにな」
「そしてその闇がですか」
「あってな」
「天下に何かをしようとしている」
「そう思える、気のせいではなくな」
「ではその闇は」
「探そうか」
これが信長の今の考えだった。
「何か手を使ってな」
「天下統一の後で」
「政を進めると共にな」
島津家を降し実質的に天下を収めたその夜にだ、信長はそれを喜ぶよりもまずは闇のことを考えていた。だがそれは表には出さず。
兵を安土まで戻すことにした、西国の兵達はそれぞれの国の近くまで寄るとそこで別れて帰ることになっていた。
その中でだ、太宰府まで来てだった。
次の日に玄界灘を渡る時にだ、その夜に。
松永は己の家臣達にだ、こう言った。
「はじめるか」
「ようやくですか」
「はじめられますか」
「待ちに待っていましたが」
「ようやく」
「うむ」
こう答えたのだった。
「これからな」
「天下統一は決まりましたし」
「まさかこのままと思っていましたが」
「やはりですか」
「ことを起こされますか」
「そうされますか」
「兵は置いてな」
松永が率いる兵達はというと。
「信貴山城にじゃ」
「我等の同族をですな」
「集めそのうえで」
「兵を起こす」
「そうされますか」
「そうじゃ、やるぞ」
こう言うのだった。
「わかったな」
「はい、待っておりました」
「殿が織田家に入られて十数年」
「今か今かとです」
「一日千秋の思いで待っていましたが」
「遂にですな」
「それがようやく」
「うむ。はじめるぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
松永は己の家臣達を連れてだった、そのうえで。
密かに織田家の陣中を離れた、その彼等を見て。
闇の中でだ、また彼等は話した。
「ようやくじゃな」
「はい、全くです」
「あの者が動きましたな」
「何時動くかと思っていましたが」
「ようやくですな」
「染まったかと思っておった」
老人の声はこうも言った。
「ずっとな」
「しかしですな」
「染まっていませんでしたな」
「ずっと待っていましたが」
「ここでようやく動いた」
「では我等も」
「動く用意を」
「そうじゃ、まずは徳川じゃ」
この家だというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ