第二百二十二話 耳川の戦いその九
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「薩摩、大隅、日向を治められよ」
「それを許して頂けますか」
「左様」
微笑みだ、信忠は義久に答えた。
「その様に」
「わかり申した」
「では薩摩に退かれるな」
「そのお言葉に従います」
「ではこれよりは三国の主となられよ」
こう言ってだった、義久が降ることを認めてだった、そのうえで。
島津家の領土も定めた、それは織田家が最初から言っていた通りの島津の旧領のままだったがそれを認めさせたのである。
その和議が終わりだった、島津の兵が薩摩に帰ったのを見て。
信忠は兵を退かせた、そしてだった。
信長は夜にその信忠のところに来てだ、微笑んで言った。
「全て見ておったぞ」
「左様ですか」
「よい、あれでな」
微笑んだままでの返事だった。
「及第じゃ、しかしじゃ」
「これに慢心せずにですな」
「よりよくなることじゃ」
「畏まりました」
「では戻るとしよう」
「安土に」
「そしてじゃ」
信長は笑ってこうも言った。
「安土でな」
「後は、ですな」
「奥羽の大名達も来る」
織田家の下にというのだ。
「この戦のことはすぐに天下に伝わる」
「奥羽にも」
「そしてそこの大名達もじゃ」
従い、というのだ。
「天下は成る」
「そしてその成った天下をですな」
「治めるのじゃ、幕府も開く」
信長はここで言った、はっきりと。
「安土にな」
「幕府もですか」
「開く、それとじゃ」
ここでだ、信長はこのことも話した。
「太政大臣の話もな」
「朝廷からですか」
「出ておる」
「それは」
「暫し考えておる」
すぐに受けずにというのだ。
「今はな」
「左様ですか」
「それと摂政の話もじゃ」
「何と、それもですか」
「織田家が天下を統べる」
「では」
「幕府を開きな」
それと共にというのだ。
「太政大臣、摂政になり」
「位人臣を極め」
「そこからも治める」
「ですか、幕府と朝廷の頂点に立ち」
「だからこそ安土をああしたのじゃ」
信長は微笑みだ、信忠に話した。
「天主をな」
「あの天主は様々な神仏を描いていますな」
「そして天の頂きにある」
「そこに父上がおられるということは」
「一の人ということじゃ」
まさにというのだ。
「わしが天下人ということじゃ」
「天下を治められる」
「そうじゃ、日輪の如くな」
「日輪ですか」
「わしは日輪が好きじゃ」
これは生まれた時からだ、信長は日輪を深く愛している。それは毎朝起きてすぐに日の出を拝む程である。
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