第二百二十二話 耳川の戦いその七
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「この戦で負けた、ならばな」
「家をどう残すか」
「それだけですか」
「だからこそ」
「そうじゃ、わしが首を出す」
織田家にというのだ。
「それで黙ってもらおう」
「しかし兄上」
「兄上がおらねば」
「島津の家は」
弟達は長兄にそれぞれ眉を曇らせて言った。
「どうなります」
「ここはそれがしが」
「いえ、それがしが」
まずは歳久と家久が言った、そして。、
義弘もだ、喜久にこう言った。
「それがしが首を出しますので」
「いや、わしでなければならん」
主の、というのだ。
「わしが腹を切ろう」
「そうされますか」
「そのことを織田家に言おう」
義久が決めたその直前にだ、信忠は。
島津の軍勢の動きが急に、それも極めて鈍ったのを観て言った。
「ではな」
「では、ですな」
「ここで」
「うむ、島津の者達に人を出せ」
そしてというのだ。
「降る様に言うのじゃ」
「ここで、ですか」
「そうされますか」
「これで勝った」
戦はというのだ。
「後は無用な殺生はすべきではない」
「では、ですな」
「ここで」
「十兵衛じゃ」
明智、彼にというのだ。
「あの者に言ってもらう」
「使者はですか」
「あの方ですか」
「そうじゃ」
こう家臣達に言った。
「あの者じゃ、そして」
「そして、ですか」
「さらに」
「十兵衛の警護には慶次と才蔵じゃ」
この二人だというのだ。
「この二人なら万が一の時も安心じゃ」
「そこまで考えておられるとは」
「使者の周りまでも」
「さもなければ使者は送れぬ」
信忠は驚く家臣達に平然として言った。
「だからじゃ」
「では、ですな」
「これより」
「うむ、あの三人を呼べ」
その明智と慶次、可児をというのだ。三人はすぐに来てそうしてだった、信忠の言葉に頷いてすぐにだった。
島津の軍勢に向かった、使者として。
これまで決死の覚悟で戦っていた彼等にだ、明智は言った。
「戦は暫し止められよ」
「?あれは明智光秀か」
「織田家の重臣の一人の」
「あの者が出て来るとは」
「何じゃ」
「義久殿に話がある」
明智は自分の姿を見て声をあげた島津の兵達に答えた。
「だからじゃ」
「とのことですが」
それは自ら槍を取って戦っている島津四兄弟達も見て聞いていた、それでだった。
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