巻ノ十一 猿飛佐助その五
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彼もまた幸村の家臣となった、ここでだった。
幸村は自身の家臣達を見回してだ、笑顔で言った。
「揃った感じがするわ」
「十人ですか」
「そういえばきりがいいですな」
「十人となりますと」
「まさに」
「そうじゃな、まだ誰か来るかというと」
幸村はその十人を見つつ話した。
「どうかのう」
「まあ天下の豪傑が十人も揃うということもないですな」
清海はこう幸村に話した。
「わし等の様の者達がこれだけとは」
「兄上、そこで驕ることを言うものではありません」
伊佐がその清海に真面目に話す。
「我等以上の者も天下にはいますぞ」
「服部半蔵殿の様にか」
「はい、そして風魔小太郎殿もです」
伊佐は彼の名前も出した。
「他にも天下の剣豪もいます」
「わし等以上のか」
「そうです、それで高慢になってはです」
それこそというのだ。
「鼻がへし折られますぞ」
「天狗になるとか」
「はい、そもそも兄上は殿に勝てますか」
主である幸村にというのだ。
「腕っ節ならともかく」
「わしは考えることが苦手じゃ」
清海は弟にはっきりと答えた。
「どうもな」
「では、です」
「そうしたことを言ってはならぬか」
「左様です」
「そうじゃな、しかし我等は十人」
清海はその数についたまた言った。
「きりがいいことは間違いない」
「うむ、確かに揃った気はする」
望月も言う。
「いい感じでな」
「そうじゃな、我等でな」
「拙者もそう思う、では御主達に頼む」
幸村はその十人に話した。
「これから真田家、そして拙者の為に頼む」
「はい、それでは」
「これより我等十人殿、真田家に命を捧げます」
「生きる時も死ぬ時もです」
「共でいましょうぞ」
「そうじゃ、我等は生きるも死ぬも同じじゃ」
幸村も家臣達に答えた。
「よいな、皆家と義の為に死ぬぞ。地獄に落ちてもじゃ」
「地獄に落ちてもですな」
筧がここで笑って言った。
「それでもですな」
「うむ、我等の旗は六文銭じゃ」
「つまり地獄の沙汰も銭次第」
「地獄に落ちても諦めぬ」
幸村は筧に強い声で告げた。
「よいな、何があろうとも諦めずじゃ」
「常にですな」
「我等は共に、ですな」
「そうじゃ、共にいようぞ」
幸村はこのことも強く言った、そしてだった。
そうしてだった、幸村は十人が笑顔で頷いたのを見てからだ。その場で。
盃を出しそれから人差し指に小柄で傷を付けてそこから血を出して盃の中に入れた。根津はそれを見てすぐに察した。
「その盃にですな」
「皆の血を入れてな」
「回し飲みをするのですな」
「この意味がわかるな」
「はい、我等はです」
根津は幸村に確かな笑みで答えた。
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