2部分:第二章
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第二章
「真面目にやるよ、絶対にね」
「僕もだよ」
そして亀もそれは同じでした。
「真面目にやるからね。走ることも泳ぐことも」
「じゃあ亀さん」
兎はその亀に対しても言いました。
「頑張ろう、お互いにね」
「うん、そうしよう」
二人で握手してそれからいよいよ競争のはじまりです。やっぱりまずはかけっこからです。そのかけっこがはじまるとやっぱり。
「うわ、相変わらず速いな」
「速いなんてものじゃないよ」
見ている皆が驚きの声をあげます。兎の足は相変わらず物凄い速さです。
あっという間に亀を引き離してそのうえで一気にゴールまで辿り着きます。亀はまだスタート地点のすぐ近くです。勝負の結果はもう言うまでもありません。
「兎君の勝ちだね」
「というかそれ以外には考えられないよ」
「いや、まだだよ」
けれどここで亀が言ってきました。
「競争はまだ終わりじゃないよ」
「えっ、終わりじゃないって」
「もう兎さんゴールに着いたのに」
「それでも終わりじゃないって?」
「だって僕はまだゴールに辿り着いてないじゃない」
亀が言うのはこのことでした。
「だからだよ。僕がゴールしてからやっとじゃない」
「そうなんだ」
兎も亀の言葉を聞いてその目を大きく開きました。
「亀さんがゴールしてやっと終わりなんだ」
「おかしなこと言うなあ、亀さんも」
「そうよね」
けれど皆は亀さんの言っていることがわからず口々に言うのでした。
「もう勝負は着いてるのに」
「それでも終わりじゃないなんて」
「じゃあ僕もなんだな」
兎はその皆の中で亀の言葉を反芻していました。そうしてそのうえで呟いていました。
「ゴールまで着いてからなんだ」
「亀さん、本当にゴールまで行くの?」
「随分と先だけれど」
「うん、行くよ」
亀の言葉は変わりません。ゆっくりとですが確実に前へ進んでいきます。そうして少しずつ先に進んで長い時間をかけて。やっとゴールに辿り着いたのでした。
「やれやれ、やっとだよ」
「やっと着いたよ」
皆亀がゴールに着いたのを見届けて疲れたように言いました。
「どれだけ長かったんだよ」
「そうだよ。どれだけなんだよ」
「けれどゴールには着いたよ」
それでも亀は満足した顔で皆に話すのでした。
「ちゃんとね」
「それはそうだけれど」
「長かったよ、本当に」
「やっと終わりか」
皆はまだ亀の言うことがわかっていませんでした。ですから疲れたような言葉はそのままでした。それを変えるようなこともありませんでした。
けれど何はともあれかけっこは終わりました。次は泳ぎです。兎と亀、それに皆は普段から亀がいるそのお池に向かいます。お池で泳ぎ合って競争をする為です。
「今度はやっぱりな」
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