精神の奥底
48 逃亡者・暁シドウ
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、下は1万ゼニー台前半から3万ゼニーといったところでしょうか。ただし身分証明を求められることがあるでの、こちらも用意できる台数は限られますが』
現代ではかつてのSIMロック解除義務化や独禁法の強化により、多くの通信事業者が参入しており、選択肢の幅は大幅に広がっていた。
「あぁ。もし必要になったら、知恵を貸してくれ」
『了解しました。では、そろそろお休みになった方が』
「そうだな」
シドウはアクアレーサーで時間を確認する。
現在、10月31日午前2時11分。
先日までの学校籠城事件のせいで疲労もかなりたまっている。
シドウはトランサーとモバイルバッテリーをコンセントに挿して充電を開始し、ベッドに飛び込む。
「8時か9時くらいにアラームをセットしてくれ」
『了解しました』
シドウは窓際のベッドの上で少しカーテンをめくった。
川の向こうには、この時間だというのに明かりが絶えることのないデンサンシティとそれを象徴するようにそびえるデンサンタワーが見える。
タワーは今日がハロウィンだからか、ちょっとした改装が行われているようだった。
今はホログラムが発展しているため、プログラムを調節するだけで様々なイルミネーションを実現しており、イベントの度に改装で手を加えるのも最低限で済む。
最新の技術を見る度にニホンがどれだけ恵まれた国かということを思い知る。
シドウは今までの人生でニホンにいた事よりも、海外にいたことの方が多い。
それも紛争地帯や貧国など技術も遅れている発展途上国ばかり。
貧困、飢餓、先進国からの構造的暴力、戦争が当たり前の世の中だった。
シドウが初めてニホンに来たのは7歳の頃だった。
空が青く、何もかもが綺麗で心躍ったのは今でも鮮明に覚えている。
空港からバスで街に出た時には、今まで自分が見てきたもの全てが夢のようだった。
人は争うことをせず、誰もが幸せそうな顔で平和で最新の技術による快適な生活を営んでいた。
これはシドウが初めて自分のやっていること、すなわちディーラーの活動に疑問を持った瞬間でもあった。
ニホンは素晴らしい国だと思った。
平和なだけではなく、貧しい人間でも生活できる社会福祉の制度が整備されている。
どんな社会的弱者にも手を差し伸べるニホンならではの優しさを感じた。
「...デンサンシティ」
しかしデンサンシティという空間は発展とともに、まるで独立した国のように変貌を遂げ、街の治安は法治国家であることを忘れる程に地に落ちた。
技術は人の生活を便利にするが、そこに住む人々に自分たちが優れた者たちであると勘違いさせてしまう。
また可能になることと同時に未だ不可能なことまで照らしだす。
優れていると勘違いした人々の一部は自分が優れていると確認しようと他者を貶めよ
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