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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
エピ-ミュトス
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 子どもの顔を眺めていると、からんからん、と丸い金属音が鳴り、モニカは顔を上げた。 入口付近で視線を彷徨わせていた女性と目が逢う。
 蒼い瞳。栗色の髪の毛はサイドだけ長く伸ばして、あとはショートカットよりは少し長い程度の長さだ。身長は160cmを少し超えているくらいだろうか。すらっとした身体つきはどこかモデルみたいだ。ジーンズにタンクトップそれだけの格好なのに様になっている。切れ上がった目つきは大人っぽい雰囲気ながらも、少しだけ童顔の彼女だった。
 プルート・シュティルナーは、物憂げな表情を一転させて笑みを浮かべた。
「ごめんごめん、遅くなっちゃって」
 店の奥に礼をしながら、モニカが座る窓辺の席にプルートも腰を下ろした。
「こちらこそすみません―――呼び出してしまって」
「いいよいいよ。今は暇だから」
 右手で頬杖をつきながら、ひらひらと手を振って柔和な笑みを浮かべる。
 窓辺から差し込む陽光。深海のような蒼い瞳の奥底までは決して届かない陽光、それでも温かな人工の丸い灯りは、確かにプルート・シュティルナーの姿を抱いていた。
「お待たせしました」
 店主の奥さんの声が耳朶を打つ。「あぁ、どうも」と頭を下げながら、テーブルの横に立つ彼女からトレーを受け取る。朗らかそうな女性の笑みに、店の奥を眺めれば、髭を少しだけ生やした短髪の男が優しげな視線を向けていた。
 トレーに視線を移す。白い米―――こうして炊かれた米を、日本では特別にご飯と言うらしい―――は女性の出身地である地球の日本からわざわざ取り寄せているらしい。つやつやとした白い輝きは太陽の輝きを受けてなお、慎ましげな美しさを艶やかに孕む。
 ほかの料理も見逃せない。メインディッシュの料理は鯖の味噌煮だ。見た目こそ泥で煮込んだようで表し難いが、味は料理の良さを言語で語ることの陳腐さを改めて自覚してくれるほどで、味噌のスープもレイヤーを為した重厚でありながらもほかの料理を演出する素朴な味わいで感動的だ。全体を俯瞰してみれば、鯖の味噌煮のその地味な見た目も、日本と言う風土の飾らない、そして奥に秘めた熱意の緊張を端的に表しているのだろう。
「お決まりでしょうか?」
「えーっと、じゃあ同じものを」
「わかりました。ブライト!」
 店の奥に声をかける。髭を生やした男が頷いた。
 軽く一礼した女性が店の奥に戻っていく。途中、気品の有りそうな夫婦に掴まり話に華を咲かせている姿を一瞥しながら、子どもを椅子に座らせると、モニカはシルバーのフォークを手に取った。
「日本食かぁ、エドワーズ以来だな」
 興味ありげにプルートがトレーを覗き込む。
 あの一見以来、連邦政府に投降したプルートは紆余曲折の後第666特務戦技教導試験隊の一員として迎えられることになったのが、まぁ、それはともかく、だか
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