92話
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ッドの下に置いてあるSDU一式に身を包もうとして、それが眼に入った。
■■■[検閲済み]の服、だった。綺麗に畳まれた服はぴっちり折り目もついている。
不思議そうにそれを眺める。これがここにあるということは、■■■[検閲済み]は何を着ていったのだろう。まさか裸で? いやいや。
取りあえず軍装を羽織り、エレアは部屋の外に出た。
「■■■[検閲済み]ー? どこー? かくれんぼ?」
ぺたぺたと廊下を歩く。
食堂に出てみたが、誰もいなかった。
シミュレータールームに行ってみたが、誰もいなかった。
格納庫に行っても、誰もいなかった。
どこにいるんだろう。早く逢いたいのに、ふれあいたいのに。
基地中を回ってそれでもいなくて、エレアは取りあえず基地の外に出た。
ビル群が立ち並ぶ中の公園に入る。やっぱり誰もいない公園には、鳩のささやき声すらなく、風すらなく、ただ何の変化もない延長が横たわっていた。
公園の真ん中の小さい池に出た。
水面はぴくりとも動かずに、まるで鏡みたいに透き通ってなんだか綺麗。
水辺を覗き込めば、銀髪に白い肌をして、赤い目をした自分の姿があった。
それにしても誰もいない。どうしてこんなに誰も居ないのだろう? いや、他の人なんてどうでもいい。それより、それより……。
「ねぇ、どこにいるの? クレ―――」
ぶちん!
※
全身の倦怠感と鈍く重たい頭痛で目を覚ました。
重油にでも漬けられたように頭が働かない。そして頭頂部を起点にして全身に回った重たい汁が倦怠を引き起こし、指一本動かそうとしてもぴくりとも動かなかった。
視線の先には白い天井は張り付いている。比喩でも何でもなく、確かにそれは白い天井だ。
白い。何だろう、ここは。何回か来たことがあるような、無いような。
いや、そもそも自分は何でここにいるのだろう。何か試験があったような記憶は無いのだけれど。
さっきの光景はなんだろう―――夢、だろうか。なんだか変な夢だなぁと思った。
うめき声が漏れる。
微かな音が周囲でなっている。何かが唸っているような音。
視界が次第にはっきりしてくる。それでも何か目に入るものが何なのかはわかるのだが奇妙に断裂していて、酷く寂しげだ。
動きたい、と思っても身体が動かない。酷く頭が重たくて、動くたびに脳幹の部分が握りつぶされるように痛い―――。
「―――先生! フランドール中尉が目を覚まされました!」
遠くで声がする。そちらに目をやろうとした時には、白衣を着た男がどこかへ駆けていくところだった。
男の声が頭の中で何度も反響する。
フランドール。エレア・フランドール。そうだ、それが、私の、名前。
ずきりと何か鋭いものが左脳と右脳の間の隙間に突き刺さるような痛みが奔る。
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