92話
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が苦い顔をしていた。隣でマリーダの乗る機体をチェイスしている青い《リゲルグ》のパイロットだ。
―――サイド8への武力行使。ネオ・ジオンは2個大隊規模の部隊を出し、2割の損害に留めたのだから悪い数字ではない……。
マリーダ・クルスは、能面のように無表情を保ちながら、愛機を泳がせる。
そうだ。喪失した戦力は、そのような「戦闘単位」に過ぎない。それは数値上でのみ勘案され、感情の入り込む余地などあるはずもない。マリーダもまたそのような戦闘単位のデータとして見なされる身体なのであり、であるからして他の人間の死に対しても感ずるところは無い。
――――――はず、なのに。
マリーダはやはり顔色を変えず、スティックを握る力を抜いた。そうして、今はロールアウト前の試作機の調整を行っているという事実を再認識し、顔を上げた。
真っ暗な深淵の闇の先、他の恒星に比べて光量の大きな星光が正面で瞬く。
―――あの星は哭いている。
何故か、そんな詞が頭に浮かんで、健やかな栗色の髪の小さな女の子は、訳も無く慄いた。
※
「―――あれ、■■■[検閲済み]?」
エレア・フランドールは、薄暗がりの中で目を覚ました。
自分の私室ではない。いや、半ば私室みたいなものだ。だって自分は■■■[検閲済み]のもので、そうなんだから■■■[検閲済み]の部屋は自分の部屋なんだ。
ふわぁ、と欠伸を一つ。万歳しながら身体を伸ばすと、弛緩した涙腺が液体を流し、うーんと糸が張り詰めるような声を上げた。
上半身だけ起こして、エレアは部屋を見回した。
昨日確かに一緒に寝たのに■■■[検閲済み]の姿は無い。ベッドは昨日、彼に愛してもらった後にしてはなんだか綺麗で、そして何の温かさも無くて。
エレアはデスクに視線を移した。
暗闇の中、ぽっかりと丸く縁どられたように明かりが燈っていた。
「■■■[検閲済み]?」
なんだ、と応える声は無い。
いつもならそこに、机にかじりつくようにして本を読む姿が在る筈なのに。
あるのはただ、綺麗に整理された机と椅子。人がいた様子は無く、机の上は彼が居たにしては酷く小ざっぱりしていた。
「?? どこにいるの?」
ベッドから出て、エレアはふと己の格好に気づいた。
競泳用の水着とニーソックス。ぽかんと眺めてから、エレアは真っ白な肌をほおずきみたいに真っ赤に染めた。
別に自分の趣味なわけじゃない。だって■■■[検閲済み]はそういうのが好きと言ってたから仕方なくなのだ、不可抗力なのだ。
でも、それでいいんだ、と思う。■■■[検閲済み]がそうなってしまったのは、自分のせいなのだ。だから、自分がずっと一緒に居るんだーって、そして、多分、それが自分のしなければならないことなんだと思う。
そうだと納得しつつ、エレアはベ
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