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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
87話
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リックディアス》の体躯は2秒とて持たなかった。外部装甲は獅子の牙によって引き裂かれ、機体内部の構造が砂粒のように砕けていく。中のパイロットは一溜りも無かっただろう。生きながら振動によって身体がバラバラになって挽肉になっていくその過程、痛いという陳腐な言葉でしか語り得ない、死―――。
 屠殺を終えた白い機体がゆっくりと振り返る。
 白い体躯に黒のラインが走る。装甲の継ぎ目から、蒼い燐光が滲む。
 《Zガンダム》に類似したメインカメラユニットに装備された翡翠の双眸が、クレイを見据える。
 機体のセンサーがその機体の型番を表示する。
 MSA-0011X―――《Sガンダム》。鋭い鮮緑のデュアルアイが宿る凛然とした面持ちに、見知った少女の顔が重なる。
 少女の名前を口にする。
 全くそんな気配が無い。自分の感覚は、この目の前の機体に少女の―――エレアの存在を知覚できない。
 連邦用のコードで通信を入れる。無線自体は繋がっているが、返ってくる音はただざらざらとしたばかりだ。
「エレア? その機体に乗っているのか?」
 《Sガンダム》は身動ぎ一つ取らず、何の色も無くただ無感動に《ガンダムMk-X》を瞳に映す。
 応える代わりに、《Sガンダム》は右手を掲げた。放熱板のような2枚の板が立ち上がり、前面を指向する。
 (わに)の咢が口を開ける。口の中で紫電が迸り、超圧縮されたメガ粒子が今か今かと解放を待ち望んでいるかのようで―――。
 少女の名前を張り上げる。肺が膨れて破裂しそうになりながら、声帯が断裂しそうになりなら、それでも彼女の名前を叫び続ける。
 だがそれが何になろう。《Sガンダム》は何の心の動きも無く、ただ右手を覆う武装の照準に《ガンダムMK-X》を収めた。
「俺がわからないのか!? なぁ、エレアなの―――」
 ―――か。
 獣の咢から鋭利な閃光が屹立した。 
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