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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
87話
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ーを逆噴射し、一息に飛びのく様は脱兎の如く。さもなくば―――。
 ロックオン警報の劈くようなビープ音が鼓膜を突き刺す。重圧が降り注ぐ方向、クレイ・ハイデガーは直上を観上げた。
 光が閃いた。稲妻さながらに降り注いだメガ粒子が《リックディアス》に直撃する。
 それは確かにMP兵器―――ビーム兵器による砲撃だったはずだ。通常ならば、ビーム兵器は徹甲弾のそれに似た振る舞いをする。つまり、その攻撃の性質は貫くことに特化する。弾丸のように射出されたビーム兵器が装甲を貫通する。それに続く爆発は機体の推進剤などが高熱のビーム兵器により誘爆する、いわば二次的な作用なのだ。
 だがそれは違う。《リックディアス》に襲い掛かったメガ粒子は、弾丸というより『鞭』だった。1度《リックディアス》の右腕に直撃し、紙を裂くようにして切り落とす。そうして照射され続けたビームの鞭がぐにゃりとしなり、不定に蠢動した光はそのまま《リックディアス》の胴体部に接触し、力士を思わせる巨躯をあまりに容易く縦に両断していった。
 まだ終わらない。《リックディアス》を仕留めたメガ粒子の蛇が鎌首を擡げる。即座に次の獲物に狙いをつけるや、身体をしならせた蛇がもう1機の《リックディアス》へと大口を開けて飛びかかっていく。
 スラスターを焚いての全力回避。その愚鈍そうな体躯にそぐわない俊敏でもって《リックディアス》が背後に飛び去る。大きくしなったビーム光はそれでも軌道を描き、《リックディアス》のすぐ脇を掠めていった。
 だが、それは所詮ハンティングの一環でしかなかった。《リックディアス》が回避に専念したのを合図に、スラスターを全開にした白い猪突が肉迫する。そうして《リックディアス》が回避しきるのを見計らったように、白い機体が襲い掛かった。
 急接近に対応しきれなかった《リックディアス》の動作は、もう何もかもが手遅れだった。ビームライフルを構えかけては右腕ごとビームサーベルで切り落とされ、左腕にビームサーベルを抜きかけてはやはり肩口から光の刃で叩き落とされた。接近と同時に自動で作動する頭部の2連装機関砲だけが間に合ったが、それも無為でしかなかった。
 白い機体が左腕を振り上げる。
 その腕は、一見して異形だった。MSの腕部にも関わらずマニュピレーターが存在せず、腕ごとギプスでもはめられているかのような左腕―――その左腕が軋みをあげながら口を開ける。4つの牙が大口を開けるや、数発ほどの弾丸を撃ち放った頭部めがけて巨大な口が甲高い獅子吼と共に打ち下ろされた。
 衝撃だけで機関砲が拉げた。クローががちりと頭ごと《リックディアス》を喰らい、上半身を押し潰していく。
 金属同士がぶつかるような甲高い咆哮と共にクロー全体が振動を起こし、《リックディアス》を轢き潰す。
 外部からの破砕と内部からの崩壊に、《
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