86話
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けた男。操り人形の癖に元々存在していない己の人生に意味を求めようとした、愚かな生き方。
根本的に違う存在で、にも関わらず同じものを、背を向け合って眺めている。
だからこそ思う。
己の対極な人間。その人間がこれから如何に生きていくのか。
ただ、それを見届けるのが己の人生なのだから―――!
(貴様が二重スパイだとは思わなかったな)
閃光の向こう、蒼い双眸が機体の装甲越しに攸人を睨めつける。
(お前はもっと気高い人間だと思っていたがな!)
声が電撃となって鼓膜を突き刺す。スラスターを唸らせた《デルタカイ》が無理やり《リゼル》のビームサーベルを弾きにかかる気勢を察知し、その白い胴体目掛けて右主脚の蹴りを叩き込んだ。
「アンタが変わっちまうからだろうが!」
(何を言っている!?)
「アンタは無辜の民に平気で銃を向ける人間だったか、と問うているのだ!」
蹴りの反動で怯む《デルタカイ》めがけて左腕のを掲げる。上腕部の装甲の一部が持ち上がり、内蔵されたグレネードの弾頭が光の尾を引いて射出され、そのまま《デルタカイ》の胴体に直撃するや、MS1機を破壊するに十分な威力の爆光が膨れ上がった。
倒した、などとは思っていない。だが、微かにだけ―――これで終わった、という雑念が脳裏を掠めた―――のを見計らったように白無垢の《デルタカイ》が炎を切り裂き、蒼い瞳を鋭くと光らせる。
一瞬の油断。それが致命的だったと気づいた時には、ビームサーベルを振りかぶった《デルタカイ》が近接領域を侵略していた。
シールドは間に合う―――ダメだ、と即断する。
既に満身創痍の《デルタカイ》の右腕から、ばちばちとスパークが漏れる。Iフィールドで固定しきれないメガ粒子が揺らめき、まるで中華刀のように幅広く、鋸のように波打ったサーベルが視界に飛び込む。ビームサーベルのリミッターを、解除している―――。
《ゼータプラス》用のシールドを装備している現状、このシールドでビームサーベルは止められない。シールドごと機体を叩き切られるのがオチだ。
(私には為さねばならぬ大義があるだけだ。その道のためには外道にも畜生にもなろう! それが私という存在の負う義務だ!)
乾坤一擲。振り下ろされた刃が《リゼル》に迫る。そのまま攸人の視界を無機的白で埋め尽くし、《リゼル》の体躯ごと両断する―――刹那。
《デルタカイ》の身体が強張るのも束の間、3条の光の槍が上から《デルタカイ》へと降り注ぐ。
1撃は胴体へ。
1撃は右腕へ。
1撃は背部へ。
正確無比の砲撃を、されど白い《デルタカイ》は事前にその砲撃の瞬間を知っていたかのようにスラスターを焚き、攸人から見て左の方へと弾けるようにして飛びのく。一撃だけが背部のバインダーを掠り、赤い残痕が黒い無に尾を引く。
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