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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
84話
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身体をすっぽりと納める。身体の小さな少女が座って丁度のサイズに作られたシート、そしてパイロットスーツ越しに感じる操縦桿は、彼女の身体によく馴染んだ。敢えて意識しようと思わなければそれが意識上に昇ることすらない道具の存在を自分の掌の中に、身体に感じながら、少女は眼前に開けた実際の宇宙空間を束の間眺めた後、サイドコンソールを2、3操作して《Sガンダム》のコクピットハッチを閉めた。
 ハッチの閉鎖とともにCG補正された宇宙が広がる。わざわざCG補正をかけるのは、実在の宇宙は距離感覚が取りがたく、そして地球上で視認することに特化した人間の肉眼には適していない空間が空け開かれているからだった。人間は、ヒトのパースペクティヴでは虚無にしか見えない空間に留まることに耐えられないのだ。
 待っててね。
 少女は内心で、呟く。そうして開明して、少女は《Sガンダム》の前で死体となった《ゼータプラス》を一目した。
 コクピットを開き、生々しく赤い双眸を光らせている漆黒の《ゼータプラス》。今まで、ずっと己の愛機だった機体。つい先ほどまで己自身だった機体。幾許かの寂しさを覚えたが、少女は操縦桿を握りしめた。
 スロットルをゆっくり開く。コクピットの中に、ほんの僅かな知覚すらできない振動が走り、少女の身体を小刻みに揺さぶる。吐く息は温く、白い肌はしっとりと湿っていた。
 思惟はあるいは永遠の時間性を伴った瞬間ほどしかなかった。AMBAC機動とバーニアの噴射で反転した《Sガンダム》は、《ゼータプラス》の機影が遠ざかっていくのを確認すると、その巨大な背部ブースターユニットから大出力の青白い炎を迸らせた。
 白い神話が、星の大地を征く―――。
 ※
 振り下ろされるビームアックスの狙いは正確にして迅速。斜め上から両断する勢いで振り下ろされる光の刃を、さらに上回る速度でハルバードの切っ先を突き出すことで受け止める。光の刃を形成する力場同士が激突と同時にスパークを迸らせ、弾けたメガ粒子の飛沫が(せき)()の塗料を融解させ、ガンダリウムの装甲を焼く。
 《ドライセン》が左腕の3連装ビームガトリングを指向する―――その瞬間のイマージュが視神経を痙攣させ、軋んだ神経の振動が脳髄を硬化させるかのような頭痛を閃かせる。脳細胞が挽き潰されるような鋭鈍痛に声が漏れそうになるのを歯で噛み砕き、操縦桿が拉げるくらいに握ったクレイは、その瞬間の到来より早く、半ば反射的にバックパックのビームキャノンを前面に倒した。背部バックパックのビームサーベルのグリップ先端のメガ粒子砲の砲口が至近の《ドライセン》を捉え、メガ粒子の砲弾を吐き出す。2柱の閃光は《ドライセン》の左腕を貫き、それでも察知した《ドライセン》はスラスターを一気に逆噴射させて胴体への一撃を回避。《ガンダムMk-X》から距離を取り、そう
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