83話
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しい。さっきから身体中が痛くて仕方ないのだ。
何かプルートが口を開きかけ、彼女は止めた。そうして口を噤んだ後、
(待ってる)
《ドーベン・ウルフ》が反転する。バックパックから大出力の閃光を迸らせ、灰蒼の狼が去っていく―――。
「―――って感慨に耽ってる場合じゃねぇ!」
コクピット目掛けてのサーベルの刺突が突き刺さる瞬間、下方から突き上げるようにしてメガ粒子の光軸が屹立する。白い〈ガンダム〉がシールドを掲げるのに合わせてスラストリバースによる回避挙動、同時にビーム砲の砲口の正面に捉える。
トリガーを引き絞ると同時に2条の光柱が〈ガンダム〉のシールドに直撃し、対ビームコーティングをそのまま貫いたビーム光が〈ガンダム〉の肩装甲に焼き傷を穿つ。たまらずスラスターを爆発させた〈ガンダム〉が後退する様に、エイリィは間抜けなほどに安堵感を覚えた。
自分の腹に手を当てる。ノーマルスーツのグローブ越しではその感触はよくわからなかったが、その真っ赤な色だけで酷く痛そうだなぁ、なんて思うくらいには赤かった。そして事実痛かった。
(すまないな、貴様には損な役回りをさせた)
隣に並んだ《リゲルグ》の単眼が全天周囲モニター越しにエイリィを伺う。
「いや〜別に良いですよぅ。元々私の人生なんてこんなことばっかですから」
(そうか―――)
マクスウェルはやはり何の声色も見せずに、それだけ頷いた。
そうだ、元々自分の人生に意味など無かった。別に誰かに誇れるような人生でもなかったし、自分でも良い人生だったなぁ〜なんて思えるものでもなかった。ただ、淡々と流れるだけの人生だった。
別にそれがどうこう言う積りもない。エイリィ・ネルソンという人間にとってそれ以外の人生は在らず、その他の人生と比較することに意味はない。だからといって己の人生が非業であるとも考えず、彼女はぽかーんとしながら人生という出来事を経験した。それ以上エイリィが感じることは無く、ただそのような事実をそのような事実と認識しているだけである。
畢竟、その人は己の生、つまりエイリィ・ネルソンという人間の生を受け入れた。たとえ永劫に己の生が繰り返されようとも、恐らくエイリィはやはり同じ認識のもとに同じ生を過ごすことだろう。
「あーでもあれかぁ」
(どうした?)
「いや、約束は守れそうにないなーと思って」
咳き込む。血の塊を飲み込んで、エイリィは操縦桿を握りなおした。
別に嘘を吐かないことを格率にしていたわけでもない。それでもやっぱり最期に嘘を吐くというのも後味の悪いと言うかなんというか―――。
まぁ、いい。人生綺麗に終わろうなんていう考えがまず傲慢だ。プロセスが無為なら結果だって無為に終結していくのだ。人の生に意味など存在していないし、目的だって存在などしていない。
ただ
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