83話
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クブルーの《ドーベン・ウルフ》へと猪突していく。まるでマクスウェルとエイリィなど道端の石ころか何か、それ以下のものでしかないように―――。
「クソ……最初っからそういう……」
咳き込む。舌の上はもう血塗れで、もうエイリィには鉄の味以外の味など識別不能だった。身体状況などわざわざバイタルデータを見るまでも無く理解できた。戦闘続行など到底不可能だ。
「お前らなんかに―――!」
だが、そんなことはどうでもいいことだった。操縦桿を握りしめ、口の中に溜まった血を吐き出したエイリィは、激痛に促されるようにスロットルを全開にした。
「―――好き勝手にさせておくかぁ!」
肩のスラスターが爆発的な閃光を迸らせ、大きく羽搏いた《キュベレイ》が手首からビームサーベルを抜刀する。そしてそのまま無防備な背中を向ける〈ガンダム〉目掛けてこのビームサーベルを突き立てて―――。
ふと、その背中がなんだかすっきりしているような、という思惟の錯綜と、警報音がコクピットに鳴り響くのは同時だった。ロックオン警報と共にディスプレイ上に敵所在―――上下から、攻撃端末―――ファンネルから狙いをつけられていることを察知し、エイリィは目を見開いた。
「しまっ―――!?」
炸裂するメガ粒子の弾丸は、まるで扇を開くように放射上に打ち出された。散弾状に閃く閃光は、単発威力こそ低いがその分回避し得ない。下から突き上げるようにして飛来した弾丸の数発が右脚部に直撃し、機体ステータスに赤い点灯が灯る。
AMBAC機動の一瞬の変化、それに伴う機体挙動の変異。瞬時に機体の側で補正をかけたとしても、鯱の如く上から襲い掛かるファンネルの砲撃から逃れるにはあまりに遅くて―――。
奔る閃光、貫く装甲。数千度の粒子の塊は、装甲材を何の抵抗も無く溶解させ、内側から膨れ上がった赤い炎の中に溶けていった。
(――――――レディには優しくしろと習わなかったか? なぁ!)
対MS用榴弾が炸裂し、もう1機のファンネルも火球と化す。白い神話目掛けて、肩から下ざっくりと喪失した灰色の機影がビームライフルに装備されたバヨネットの光刃を発振させながら相対距離を一息で詰める。振り向きざまに掬い上げられたメガ粒子の刃とバヨネットが接触し、一際大きな干渉光を迸らせた。
(エイリィ、無事か?)
事前にプリセットされた秘匿回線の音と共に、音だけの通信が耳朶を叩いた。
無事かどうかなんて生体データを見れば一目瞭然だろうに―――その声色から察知したエイリィ・ネルソン少尉は―――エイリィ・ネルソンは、微かに口角を上げた。
「ええ、無事です」言いながら咳き込んだ。「あと10年は戦ってられますよ」
そうか、と応えたマクスウェルの声は酷く事務的で色を感じさせなかった。
〈ガンダム〉に弾かれたように突き飛ばされる
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