79話
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こと―――わかっている。自分がエレアの背後を任された理由も―――もちろん機体特性的にという理由もあるが、理解している。
黒の《ゼータプラス》も雪の降り続ける空に飛び上って行った。追従するようにフットペダルを踏み込むや、明らかにそれと分かるずっしりと感じる感覚、人為的に発生させられた重力がクレイの身体に圧し掛かった。
みるみる地表を離れていく。直径6km、全長40km強。コロニーとしては比較的大型だが、やはりMSにとっては手狭な箱庭だった。
黒雲の下、眼下を見渡せば街が広がっている。MS同士の戦闘の破壊の後か、所々明かりのついていた区画があった。
その闇の中で咲く光―――マズルフラッシュの光。頭部を破壊された《リックディアス》、コクピットにサーベルを突き立てられ遺構と化した黒い機体―――《ジェスタ》。戦闘があった、のではない。戦闘はまだ続いている―――。
不意に、ディスプレイに別枠でウィンドウが立ち上がった。チープな電子音と共に表示されたそれは、部隊内で共有される生体データだった。
最初、そのウィンドウは黄色の枠で―――つまり緊急の事態が切迫しているわけでなく、単なる注意勧告を意味するウィンドウとして表示されていた。ゲシュペンスト02―――エレアの生体機能に微かな異常の兆候を知らせるそれを一瞥し、クレイの《ガンダムMk-V》の前を行く《ゼータプラス》に視線を移した瞬間だった。
単なる注意喚起を意味していた安っぽい音とウィンドウが急に甲高い劈くような警報音を鳴らし、ディスプレイ上に赤く点滅する警告ウィンドウが立ち上がる。
エレアの乗る黒い《ゼータプラス》は、まるで糸の切れた人形のように墜落していき―――。
「02―――エレア!」
(9時の方向、高熱源確認!)
(―――何!?)
黒い《ゼータプラス》が堕ちていく様の視界の端、『河』と呼ばれる開放型コロニーの採光ミラーが一瞬で赤熱化し、オレンジ色の融解した超強化プラスチックが溶岩さながらにはじけ飛んでいく。
コロニー内の大気が一気に放出されていくその風穴から、『それ』が矢のように飛来した。
白と群青のカラーリングに扁平な外見は、一瞥でMSが可変しているのだと判別できた。その白亜の機影が可変する。背中に己の体躯ほどもある異形の大翼を背負い、ぎらと鋭利に灯る翡翠の瞳が《ガンダムMk-V》を睨めつける。
その外観は明らかに連邦の機体―――Ζ計画系の機体だった。だが、クレイはそれを芥子粒ほどの不純物も無く敵と識別した。
IFF不明。
所属不明。
目的不明。
連邦の機体だから味方ではない、という理解もあった。だが、合理的理性的思考がそれを敵と判断するのと、己の直観がそれを敵と判断するのは同時だった。
あれは敵だ。頭のどこか、身体のどこか、身体全体があの物
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