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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
79話
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どに酷く不快を覚えて、慌てて検閲官はクレイに考えるのを止めさせた。
(本来外の戦闘は我々の管轄外だがそうも言っていられん。現状唯一実弾を装備する我々第666試験部隊も敵部隊の迎撃に当たる。良いな?)
 了解の応答をしながら、クレイはそのフェニクスの声に若干奇妙な感情を覚えた。彼女は感情の起伏を見せずに、いつも通りの素振りだった。だというのに自分は何を感じたのか―――。気のせいか、と思い直した。
(前衛は私と04が、前衛支援を02、部隊支援に08の陣形で行く。コロニー外への予定進路は戦域マップに表示するからそれに従え)
「了解」
 言いながら、クレイはディスプレイに投影された戦域マップに目を落とす。何のことは無い、コロニーの中央を突っ切る形でコロニーの端にある”港”まで進行後に、そこからコロニーの外へ出るというだけの話だ。
(666試験部隊、出るぞ!)
 フェニクスの声と共に鈍い音と振動が鼓膜を揺らした。キャットウォークがさらに上昇するとともに機体を固定していたケーブルが排除される。ディスプレイ上に発進可能の表示が立ち上がると、クレイは紫赤の《ガンダムMk-V》を前進させた。
 ぱっくりと開いた格納庫を潜れば、既にすっかり闇に沈んだ昏い外の光景が目に入る。
 カタパルト無し、スラスターだけの上昇するのも酷く推進剤を消費する行為だが、コロニー内であるだけマシだ。背後の格納庫のハッチが閉鎖したのを確認し、周囲に誰も人がいないことを確認して、スロットルを開けた。
 微かな振動がコクピットを揺らす。視界の端、隣の格納庫からは既に灰色と鮮やかな蒼の《ゼータプラス》と《リゼル》が閃光の尾を引いて飛翔していた。
 黒い《ゼータプラス》の頭部ユニットが微かに《ガンダムMk-V》を一瞥する。通信ウィンドウに映ったエレアの表情は、外見相応に無邪気で?かった。
 この陣形、エレアを前衛支援のために中央に置く陣形の意図が分からないほどクレイは鈍くなかった。
 先ほどのエコーズの男―――名前は何だったか、まぁどうでもいいが、あの男も言っていたではないか。
 彼らの任務はエレアを守ることだったが、それが究極目的ではない。与り知らぬ諸権力の戦略の中でクレイが動いていたのなら、彼らもまた同じだろう。エレア・フランドールの喪失にデメリットを蒙る何がしかの権力と、エコーズを動かせる権力との間で友好条約が交わされ、その結果として実働部隊が乗り出している。その諸権力の実在が何なのかはクレイの知る由のないことであるし、またどうでもいいことだった。だが、その権力のゲームの結果として、エレアが戦闘に出なければならないという奇妙な矛盾が生じる。そのプロセスがわからないのがもどかしかった。
 フェニクスはよく理解しているのだろう。だから、取り得る最善の策を取る。
 己の為すべき
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