77話
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白無垢の存在。燃え盛る焔を背にし、大翼を広げる姿は―――。
熾天使。そうとしか理解できないほどにその機体は美しく、そして畏ろしかった。
機体のデータベースに照合は無い。それでも理性に頭を切り替えた男は、それが天使でもなんでもなく、MSなのだと判断した。
このタイミングで来る敵。逡巡などなく、《ジェスタ》はアサルトカービンの切っ先を掲げると同時にトリガーを引いた。
迸った亜光速の光軸は、減衰していようがMS1機など容易に破壊し得る。その殺戮の光を前にしてもなおその敵機は身動ぎ一つなく、そうしてメガ粒子の光軸が―――。
弾けた。敵機に直撃する遥か手前、何の前触れもなく発生した何かが、その天使に触れることを拒絶した。
男は、見た。
宙に浮かぶ幾何学的な形の何か―――結界。三角形のそのビームバリアが、アサルトカービンの三連射など何の苦も無く受け止めたのだ。
ゆっくりと、さも《ジェスタ》など居ないかのようにその敵が地上に降り立つ。大通りの向こう、悠然と大地に立ったその機体は、何の感慨も含蓄も無い電子の瞳を《ジェスタ》に向けた。
機体ライブラリが敵機を照合する。
RX-93N2《νガンダム》。そのあまりに超越的な双眸が《ジェスタ》の装甲を貫き、男の形相をまざまざと観る。
人間理解など遥かに超越した存在者―――その瞳が言う。
お前は断罪されるのだ。
そして私はその罰を下すものだ。
ただそれだけの事実を告げて、焔を熾らせた『ガンダム』が翼から光耀く聖剣を引き抜く。
数十mほどの距離など、あってないようなものだった。アサルトカービンの弾丸はシールドで受け止め、サーベルを引き抜きかけた瞬間に《νガンダム》の頭部の機関砲が左腕の掌を破砕した。
下から掬い上げるように振るわれたビームサーベルが右腕を切り裂く。《ジェスタ》の頭部機関砲の斉射の瞬間に、限界まで膝を曲げて―――まるで人間さながらの挙動で躱した『ガンダム』は、間髪入れずにビームサーベルを横なぎに振るった。
ビームサーベルの光は《ジェスタ》自体にほとんど損傷させなかった。数万度に達する灼熱の刃は胴体部を撫で斬りにし、そのパイロットだけを綺麗に蒸発させていった。
※
黒い敵機のゴーグルカメラに驚愕の念が灯る。恐怖に突き動かされるように身を反転し迎撃しようとしたが、その動作は酷く緩慢に見えた。
連邦の機体にしては、その敵機は頑強な外観をしていた。だが、横殴りに―――ただの暴力としか言えないほどの衝撃を伴って襲い掛かったその青い機体と比較すれば、ただのやせっぽちにしか見えなかった。
敵機の襲来を察知した黒い敵機はスラスターを焚いて一気に離脱する。その軌跡をなぞるように猪突をかけた青い機体―――ゴーグルカメラの奥で単眼をぎらつかせた重鈍な巨躯は、その外
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