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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
76話
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のかせる。それより早く迸った光軸は90mm機関砲を貫き、そのままビル群を蒸発させていった。
「コロニーの中で―――!?」
 ビーム砲を―――。
 言いかけた時には、《ゲルググ》の体躯が突き飛ばされていた。
 前面からいきなり降りかかった衝撃で胃が潰れた。吐瀉物を吐き出さなかったのは、日ごろの鍛錬の賜物だったが、意味のないことだった。
 吹き飛ばされた《ゲルググ》はそのまま背後のビルに突っ込み、ディスプレイに致命的損傷の表示が次々と立ち上がっていく。
 ビームを回避した瞬間に、今や手にかけんとしていた敵が体当たりを見舞ったのだ。ショックアブソーバーなどまるで役に立たない激震に揺さぶられ、意識が飛びかけながらもクレイは目を開けた。
 あの敵が居る―――左に視線を流せば、大通りの向こうに《ジェガン》の上位機種らしき機体がビームライフルを構えていた。
 あぁそうか、と納得した。
 上手いように誘い出されたのだ。この目の前の敵は、狙撃ポイントに誘導するための撒き餌に過ぎなかった。
 黒い敵機が切り落とされた右腕からサーベルグリップを拾い上げ、光の刃を形成する。コクピットだけを正確に焼き尽くすためだろう、人間の体感でいう所のナイフ以下のサイズにまでビームサーベルの刃を縮小させる。
 身体は無事だった。機体がダメだった。
 元々無理な強化をした機体だった上に、クレイの戦闘はあまりにも強引だった。ディスプレイ上の機体ステータスに目を流せば、所々黄色―――ダメージは追っているがまだ駆動可能である―――ところもあったが、ほとんどが赤―――死んでいた。
 あのサーベルで突かれる。コロニー内を考慮しているのだろう、なるべく破壊を広げないように、コクピットだけを正確に潰す。数万度に達する光の剣はコクピットハッチなど訳なく溶解させて―――。
 そして、どうなる?
 自問する。
 コクピットハッチを溶解させるほどだ。クレイ・ハイデガーの肉体など秒ほども耐えることは出来まい。
 つまりはどういうことだ?
 つまりは―――。
 何かが鳴った。歯と歯がぶつかる音だった。嫌だと思ったその思考はあまりに短慮で?かった。
 回帰する予感。ぎらと睨みつける単眼と、目の前の敵のバイザーの奥に潜む単眼が重なる。今までなんでもなかった虚無を指向する志向が、容赦なくクレイの身体(こころ)を突き刺す―――。
 その光景をただ眺めていたのは、自分を殺傷する相手を最後まで睨みつけてやろうなどという気概からではない。最後まで自分を保っておこうなどという固い自己意識からではない。
 ただ、金縛りにあっていただけだった。目を瞑りたいのにそれも出来ず、戦々恐々と存在が消滅するその暴力的な刹那の到来を、クレイ・ハイデガーの感覚は刻み続けていた。
 敵機がサーベルを逆手に持ち替える
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