76話
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そカタログスペックならば《ガンダムMk-V》にも比肩しよう。それでもクレイはその挙動を完全に脳内に投影させ、それに対処する己の挙動の幻想を現前する己に身体に同調させる。
逆袈裟に奔った光刃目掛けて数万度に達する粒子束を叩き付ける。干渉し合ったIフィールド同士がスパーク光を閃かせるのも構わずにバックパックから機関砲を引き抜く。
彼我距離零。照準を合わせもせずにフルオートで機関砲を迸らせた。
たまらずバックステップで回避挙動を取った瞬間に、それに追従するようにスロットルを調整し、フットペダルを踏み込む。全く同じタイミングで飛びのくや、その頑強そうな機体目掛けて光の剣を打ち込んだ。
バックパックから伸びる懸架アームに支えられたシールドは一瞬で耐久限界を迎えて溶断。赤熱した流体金属が血飛沫のように舞い、そのまま《ゲルググ》は瀑布の如く剣戟を叩き込んでいく。サーベルでいなしきれず、装甲の所々に生傷のような切断痕を刻んだ敵が苦し紛れにサーベルの刺突を放った。
その刃目掛けて、クレイは防ぐように機関砲を掲げた。ビームサーベルが機関砲を溶解させる瞬間、リボルビングランチャーのうちの1発が起動。にょきりと発振器が突き出るや、発進されたビームの刃がビームサーベルを受け止め、輪っかのように干渉光を押し広げていく。
敵機の驚愕を、クレイは確かに直観した。そしてその敵の鈍さこそ、クレイのつけ入る隙だった。
戦闘の帰結を決定する致命的要因はパイロットの腕だけではない。MSの性能だけでもない。その両者が統一体となった時こそ、その戦力は脅威となる。
クレイもこの《ゲルググ》に乗ってからまだ40分と経ってはいない。だがこの機体は酷く扱いやすかった。乗りなれれば尖った性能の方が高い戦闘能力を発揮し得る。だが、特徴が無いという特性は『当たり』を掴むのに時間が要らない。人馬一体という東洋の境地には達していないだろう、まるで手足というようにもいかない。それでもこの《ゲルググ》は良く躾けられた猛犬のようにクレイの言うことを良く聞いて、そしてその指示を最大限反映する機体だった。
敵にはそれがない。機体そのものが尖った機体なのか、パイロットの腕が悪いのか。
直観する。
どちらにせよ、この機体は自分の敵ではない。
返す刃を掬い上げ、音速すら届こうかという刃の切っ先が弦光を描き、敵機の右肘から下を切り落とす。切断された肘から先の腕部がごとりとコンクリートの大地に落ち、敵機の赤いゴーグルカメラに慄きが灯る。
後はさらにビームサーベルを振り落し、この敵を屠殺する。
まさにそのように《ゲルググ》を駆動しかけた刹那、クレイは反射的にスロットルを全開に弾いてスラスターを焚いた。
逆噴射した光が黒い《ゲルググ》をその場から飛び
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