76話
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しと捉えていた。
臓腑をこみ上げる混淆した感情。吐き気のような、その反対のような持続がざらざらと―――。
(こちらSF702、背後の敵は処理しておいた)
野太い声だった。
エコーズの中の誰かの声だろう。誰でも、良かった。了解、と応えながらクレイは《ゲルググ》の足元の設定を変えた。やや、雪が降り積もっている。
クレイは空を仰いだ。
コロニーの向こう側での戦闘はまだ続いている。スラスターを焚いていけば10分とかからずに戦闘に介入できるだろう―――敵に背を晒す愚を犯す前提だが。
一体どれほの敵が居るのだろう。これでは明らかにネオ・ジオンの部隊との戦闘にコロニー守備隊の数が足らない。
死んだ、だろうか。彼女は、あの日本人の彼女は、もう―――。
もう一度、クレイは視線を空の向こうにやって―――。
光が立上った。
正確には今までも閃光が奔ることはあった。だがそれは、ビーム砲の火砲と言うよりはMS1機も破壊できないようなものだった。
今のは違う。確実に敵を破壊するという鉄の意思に満ちた光の柱は、コロニーの反対側の地表を焼き、隔壁に風穴を開けていった。
一瞬の疑念。それが、ほんの僅かにクレイの緊張を弛緩させた。
だからだろう、クレイの知覚が敵を敵と認識できたのは、コクピットの中にけたましい接近警報の音が鳴った後だった。
そして、その黒々とした敵意的志向に反応した時には、もう遅かった。
接近する機影の方向に相対した瞬間、視界一杯に漆黒の影が迫った。
サーベルを引き抜くタイミングが予想に切れ目を入れる。質量を持った黒い残影の速度はクレイの経験を遥かに超えて一瞬のうちにプライベートエリアへと侵入し、サーベルを保持した手を握りこむようにしたその漆黒の機体のゴーグルカメラがぎらとクレイを睨めつける
フットボーラーさながらのその頭部のカバーに血色のゴーグルカメラ―――。
《ジェガン》。
違う。これが普通の《ジェガン》なら対応し切れたはずだ。この機体はその上位機種!
ダメージコントロールが悲鳴をあげる。高々腕部を握られているだけなのに腕の速射砲が拉げ、右腕の機体ステータスが黄色く灯っていた。
装備が少なすぎる。
シールドの炸裂ボルトを起動、吹き飛んだシールドが宙を舞う。呼応するようにスラスターを逆噴射して飛びのいたその黒い機体が左腕からサーベルを引き抜き、光の刃を発現させる。
試験部隊の機体が強奪されたのだろうか。666の格納庫は無事なのか―――。
それ以上の戯れの余裕は、寸分ほども無かった。
連邦のMSとは思えないその頑強そうな体躯がスラスター光を背負い、一瞬で相対距離を皆無にする。
《リックディアス》などとはものが違う。その圧倒的な瞬発力、そして握ったサーベルを振るう速度。それこ
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