74話
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なんでしょう?」
よっこいしょ、とコンクリートの下から身を乗り出した禿頭の男が振り返る。人懐っこさそうな表情のまま、目を白黒させるエレアの頭を軽く叩いた。
「にぃに―――?」
「あら、サイド3に行ったのでしょう?」
「―――ご兄弟で?」
「ま、そんなとこね」
腰に手を当てた男が自慢げに笑う。はぁ、と曖昧に応えて、クレイはその男の姿を眺めた。
ダークブラウンの戦闘服にボディアーマー。果たして、クレイの知らない装備だった。
「じゃあ行きましょうか。この面倒事をなんとかするために」
男が開け放たれたコンクリートを見下ろす。その下はぽっかりと穴が開いていて、ずっと下まで続いているらしかった。
男が先に穴の下に降りていく。クレイとオーウェンを見比べたエレアは、ほら、とすっかり目出し帽を被った男の手招きに従って黒い穴の下へと降りていった。
「行け。俺は別に用事がある」
オーウェンが顎をしゃくる。クレイは、穴の前に立った。
梯子は真下に続いている。流石に軍人というだけはあるのだろう、エレアは順調に降りているらしい。昏い穴の中で、銀色の髪がひらひらと揺れていた。
「オーウェンさん、あの」
早く行け、と目で言いながら、オーウェンは「なんだ」と不愛想に言った。いや、むしろいつものオーウェンの表情だった。
「何者なんです?」
「あの男か」オーウェンが穴を見下ろす。
「エコーズだよ」
「エコーズって、あの……?」
「あぁ。まぁ、エコーズが誰の指示のもと動いているのかは、俺は知らんがな。隊長なら知っておられるだろうが」
ほら、行け、とオーウェンが睨む。肯いたクレイは、ゆっくりと靴が梯子を噛む。そのまま冷たい梯子を掴んだクレイは、そのまま黒い穴の中へと降りていった。
何mかほど降りたところで比較的広い下水道に降り、また何mかほど直進しては再び降下し、何の用途に使われているのかもよくわからない通路に出ては降りを繰り返すこと何度か。通路を横道にそれ、分厚い隔壁の前に立った禿頭の男は壁際に埋め込まれたタッチパネルに触れると、素早く10桁以上のパスワードを正確に打ち込んだ。
ロックが解除される音と共に、数十cmほどもある分厚い金属のドアが左右にスライドしていく。
ぽっかりと開いたがらんどう。背後でオーウェンの口笛が耳朶を打つ。ぽかんと口を開けたクレイは、その空間に足を踏み入れながらその正面の構造体を網膜に焼き付けた。
20mほどもある空間ぎりぎりの高さほどもある、ダークブルーのコンストラクト。末広がりの脚部は連邦の機体とは異なった曲面構造をしており、大きく開いた肩は、その嘴を備え冠羽のようにユニットが屹立した頭部も相まって、大空を舞う熊鷹を想起させた。
ガントリーの柱とコクピット前にかかるキャットウォークに囲われる
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