74話
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い。だからこそ満面の笑みを浮かべていられるわけだが。
ともかく、権力を権力と理解するのは、それなりに階級が上がってからだ。少なからず軍に入ってからわずか1年のルーキーが、自分の踊っている舞台が権力の掌の上だったと思い知らされることなどあるまい。
「お偉いさんたちのゲームに付き合うのは下の者の礼儀作法らしいからな」
「いい経験になりましたよ」
「政争に感けることはMSパイロットのすることではないからな。何事も分を弁えることだ」
オーウェンが皮肉っぽい笑みを浮かべる。クレイも苦笑いを返した。
再び通路から顔を出したオーウェンが眉間に皺を寄せる。そして、首に下げた双眼鏡で遠くを覗き込む。
「《リックディアス》―――警備部隊の機体か?」
「どうしました?」
「いや、警備部隊の―――何?」
オーウェンが微かに身を乗り出す。視線を追うように上空に視線を上げたクレイは、数km先の上空に煌めくマズルフラッシュの閃光を見た。
「あれはヴィルケイの《リゼル》―――」双眼鏡をおろしたオーウェンは険しい顔をしたまま、思案気に顎に右手を添えた。
「情報が少なすぎるな」オーウェンが丐眄する。そうして壁に寄りかかりながら、雪の降る空を見上げた。
「そろそろ来るはずだと思うのだが」
「来るって―――」
言いかけて、金属の軋む音が響いた。
ハンドガンを構えながら、振り返った時には目を丸くしたエレアが地面を見ていた。
「今地面がぱたんて」
「は?」
銃を降ろして、エレアと顔を合わせる。
地面がぱたん? と彼女に言おうとした瞬間、エレアの手前のコンクリートが勢いよく持ち上がり、その下から這い出した目出し帽を被った顔がクレイとオーウェンを見遣った。
ぎょっとしながらその目出し帽目掛けてハンドガンを向ける。セーフティは解除済み、あとは指の腹でトリガーを押し込めば―――。
「待て」
オーウェンがクレイの銃を掴む。
「予定より時間がかかったようだな」
「ごめんなさいねぇ、ちょっとこっちでも色々あったものだから」
目出し帽の中で唯一露出した目が笑う。その声に、そして照れたように頭を?くその親しみ深さをどこかで見たことがあるような―――。
「その人は?」
銃を降ろしながらオーウェンとその目出し帽の男を見比べる。
「ハロー、ボーイ。よろしく」
ひらひらと手を振るガタイの良い目出し帽の男。そして首元に手を当てて、薄く雪が積もり始めた黒い目出し帽を脱ぎ捨てた。
「あ―――あんたは!?」
人の良さそうな禿頭の男の笑みがあった。
サイド3・ズムシティのあのレトロなレストランの禿頭のシェフ―――眼前の男の声と顔は瓜二つどころかそっくり同じだった。
「にぃにから話は聞いてるわよ、クレイ・ハイデガー少尉。お姫様を守る騎士、
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