73話
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(無茶だよ、コロニーの中でなんて!)
紗夜の声が耳朶を打つ。
未だにキャットウォーク上に居る彼女は、怯えを含ませた涙声を上げながらヴィルケイの《リゼル》のコクピットハッチにしがみついていた。
つい先ほどのコロニー全体にかかった警報、そして連続して生じた電子的なジャミング。これまでなんとかヴィルケイたちが得られた情報は、どうやらネオ・ジオンの部隊がこのコロニーへの物資輸送船を襲撃したということ、そしてそれに呼応するようにして他バンチのコロニー守備隊が何者かに襲撃され、保有するMSを強奪された―――ということだった。
(そっちはどう?)
前面のディスプレイに通信ウィンドウが立ち上がる。ローカルデータリンクで共有される同部隊の機体は、隣の格納庫に居るジゼルの《ガンダムMk-V》だった。
「こっちはもう行ける。優秀なスタッフがいるんでね」言いながら、ヴィルケイはコクピットハッチの前の紗夜に視線をやった。そうしながらも、機体ステータスを一瞥する。
翌日行う実弾を用いた演習のために、第666部隊には偶然実弾兵装が持ち込まれていたのだ。それが僥倖によるものなのか、それとも――――ヴィルケイは、考えるのを止めた。考えたところで所詮それは栓のない思考だ。益も無い。ヴィルケイはどこぞの誰かと違って、物事をそう難しく考えたくはないのだ。頭を使うのは、MSについてと、どうやって道行く美女をベッドに誘うかの技術オンリーだ。それに、仮に何がしかの権力の中で踊らされていようが、ヴィルケイが益を得ているのも事実だ。有難く使わせてもらうだけである。
(実弾って言ったってMP兵装はコロニーの中で使えないんだよ!? 守備隊は実弾装備だっていうのにこっちは撃てないんじゃあ―――!)
「この襲撃を仕掛けた奴がどんなんだかは知らねーがな」ディスプレイに手を伸ばして操作しながら、今一度ディスプレイに映る彼女を見た。
「守備隊を襲ってMSを強奪するくらいのことはやってのけるくらいなんだから、俺たちが実弾装備だってことくらいは把握してるかもしれない。そしたらどっちにしろ、俺たちはお邪魔蟲としてそろそろ狙われるだろ?」
ヘッドセットの奥で紗夜が苦悶の声を上げる。
(ま、そーゆーことね)と無線を入れるジゼルの声は、事態に反して気負いを感じるものではなかった。どこかおっとりした見た目に反して―――いや、その見た目通りの図太さがある女だった。それだけ修羅場を潜ってきたということでもあるのだろう。
「隊長には連絡つかなかったんだよな」
(あぁ、副隊長にも連絡しようとしたが駄目だった、基地司令部のほうには繋がらねぇ)
ヴィセンテの声に、ヴィルケイは思わず顔を上げた。
司令部はちょうど格納庫群の真上に方にある。直線距離にすれば僅かに6km、MSならば目と鼻の先だというの
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