暁 〜小説投稿サイト〜
機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
73話
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
(無茶だよ、コロニーの中でなんて!)
 紗夜の声が耳朶を打つ。
 未だにキャットウォーク上に居る彼女は、怯えを含ませた涙声を上げながらヴィルケイの《リゼル》のコクピットハッチにしがみついていた。
 つい先ほどのコロニー全体にかかった警報、そして連続して生じた電子的なジャミング。これまでなんとかヴィルケイたちが得られた情報は、どうやらネオ・ジオンの部隊がこのコロニーへの物資輸送船を襲撃したということ、そしてそれに呼応するようにして他バンチのコロニー守備隊が何者かに襲撃され、保有するMSを強奪された―――ということだった。
(そっちはどう?)
 前面のディスプレイに通信ウィンドウが立ち上がる。ローカルデータリンクで共有される同部隊の機体は、隣の格納庫に居るジゼルの《ガンダムMk-V》だった。
「こっちはもう行ける。優秀なスタッフがいるんでね」言いながら、ヴィルケイはコクピットハッチの前の紗夜に視線をやった。そうしながらも、機体ステータスを一瞥する。
 翌日行う実弾を用いた演習のために、第666部隊には偶然実弾兵装が持ち込まれていたのだ。それが僥倖によるものなのか、それとも――――ヴィルケイは、考えるのを止めた。考えたところで所詮それは栓のない思考だ。益も無い。ヴィルケイはどこぞの誰かと違って、物事をそう難しく考えたくはないのだ。頭を使うのは、MSについてと、どうやって道行く美女をベッドに誘うかの技術オンリーだ。それに、仮に何がしかの権力の中で踊らされていようが、ヴィルケイが益を得ているのも事実だ。有難く使わせてもらうだけである。
(実弾って言ったってMP兵装はコロニーの中で使えないんだよ!? 守備隊は実弾装備だっていうのにこっちは撃てないんじゃあ―――!)
 「この襲撃を仕掛けた奴がどんなんだかは知らねーがな」ディスプレイに手を伸ばして操作しながら、今一度ディスプレイに映る彼女を見た。
「守備隊を襲ってMSを強奪するくらいのことはやってのけるくらいなんだから、俺たちが実弾装備だってことくらいは把握してるかもしれない。そしたらどっちにしろ、俺たちはお邪魔蟲としてそろそろ狙われるだろ?」
 ヘッドセットの奥で紗夜が苦悶の声を上げる。
 (ま、そーゆーことね)と無線を入れるジゼルの声は、事態に反して気負いを感じるものではなかった。どこかおっとりした見た目に反して―――いや、その見た目通りの図太さがある女だった。それだけ修羅場を潜ってきたということでもあるのだろう。
「隊長には連絡つかなかったんだよな」
(あぁ、副隊長にも連絡しようとしたが駄目だった、基地司令部のほうには繋がらねぇ)
 ヴィセンテの声に、ヴィルケイは思わず顔を上げた。
 司令部はちょうど格納庫群の真上に方にある。直線距離にすれば僅かに6km、MSならば目と鼻の先だというの
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ