73話
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に―――。
(『03』、聞こえてる?)
ざらざらとした雑音が混じったジゼルの声が耳朶を打つ。その声色で察したヴィルケイは「聞こえてるぜ」と何でもないように応えながら、ヘルメットのバイザーを降ろした
(やっぱりおいでなすったみたいだねぇ)
ジゼルの声と共にディスプレイ上のローカルデータリンクが更新され、40kmほど向こうにMSが出現したことを示した。
MSA-099《リックディアス》が3機。所属は隣のコロニーの警備部隊、と表示されていた。
「おいおい今はネオ・ジオンとやりあってんだろ? だったらこんなところに来てんじゃねーよ」
お道化たように大仰に肩を竦める。(お仕事したくない人たちなんでしょ?)と返すジゼルも、機内カメラの向こうで微笑を浮かべていた。
「俺が先行するから07は援護してくれ。《ガンダムMk-V》はコロニーの中じゃ戦いづらい。俺の方が適してる」
(居るだけは居るけど。ま、いざとなったらビームライフルは使わせ貰いましょうか)
「十分だ」
言って、ヴィルケイは操縦桿を握りなおした。そうして、未だに《リゼル》の胴体の前で悲しげな顔をしている少女に声をかけることにした。
「大丈夫だって。俺は負ける戦いをするほど間抜けじゃねーってわかるだろ?」
(そりゃあそうだけどさ……)
「んじゃあ信じてくれや。お前が働いてる職場の人間の腕って奴をよ」
釈然としない様子だったが、微かに首を縦に動かした紗夜は、覚束ない足取りのままキャットウォークを去っていく―――と。
(ちゃんと帰ってきてよ?)
紗夜の怯えたような声が耳朶を打つ。
「当ったり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだよ」
うん、と小さく応えた紗夜は、今度こそ通信を切った。
はっきり言えば、ヴィルケイの好みは『女』だ。どこかの誰かさんと違って、未成熟な少女に趣味は無い。だが、やっぱり女の子はきゃっきゃウフフしていて貰いたいものだろう。そこに年齢と外見は関係ない。
故にヴィルケイは落とされない。理由? 簡単なことだ。それは己の格率に著しく反するから。Q.E.D証明完了。これ以上に明晰で普遍化可能な命令法など、古今東西世界中に存在したことなど無かった。
そしてその格率ゆえに、ヴィルケイはたった今己に立ちふさがる敵に、容赦という寛大さを1mmほども与えてやる気は無かった。
「フルブーストする! 整備兵は退避壕に避難しろ!」
(ちょ、ちょっとおい!? 流石に格納庫でスラスターを使うのは待て! それにまだ計器が―――)
「ウルセェ、高い金払うのと死ぬのどっちが良い!?」
悲鳴をあげながらもまだ抗議を続けようとするのを無視して、ヴィルケイは《リゼル》のスロットルをゆっくりと開放していく。バックパックのブースターが閃光を吐き出し、その軽い振動が操縦桿とシー
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