暁 〜小説投稿サイト〜
機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
72話
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口元を抑えて蒼い顔をしたアヤネは振り返って、一層顔を青くした。丁度クセノフォンが死体を肩に担いで、その死相がアヤネの方を向いていたからだった。小さく悲鳴をあげ乍らその場にへたり込みながらも、彼女は自分の頭の中の司令部の見取り図を想起していた。
「えーっと確かそこの通路右に曲がった角に……」
 目を瞑りながらアヤネが言う。「そうか、わかった」と短く応えたフェニクスは、その琥珀色の瞳をクセノフォンに向けた。
「ブリンガー、貴様はこのまま司令部の中で遊撃に当たれ。敵の狙いが被験体(エレア)である以上、その関係者だったモニカもあるいは標的(ターゲット)かもしれない。戦闘の規模からして奴らはここで長いこと戦う気はないんだろうが、それでもお偉いさんがやられると不味いしな」
「大尉は?」
「私は格納庫にいったん戻る」
 言いながら、フェニクスは人型の物からサブマシンガンと腰のホルスターからハンドガンを引っ張り出すと、へたり込んでいるアヤネへと放り投げた。憔悴しきっていたアヤネは落っことしそうになりながらも、なんとかその得物を手に取った。
「私とアヤネが居てはお前にとって邪魔だろう? それにエレアとクレイについての情報が欲しい。オーウェンを着けておいたから大丈夫だとは思うが」
「それだけですか?」
 フェニクスは束の間きょとんとした目をクセノフォンに向けた。そうして、フェニクスは琥珀色の瞳とその綺麗に整ったかんばせに獰猛な笑みを浮かべた。
 「私はな」トリガーガードの中に指を入れ、くるくるとハンドガンを回して見せる。
「私の邪魔をする奴らの面を見たくなっただけだ」
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