72話
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ん消音のためのアクセサリーはあるが、やはりできることなら血は流さずに殺すべきなのだ。
周囲に視線を回し、自分の周囲には腕の中の人間と後は物しかないことを確認すると、自分が降りてきた排気口を仰いだ。
「大尉、大丈夫ですよ」
応答の代わりに、クセノフォンのすぐ脇に排気口から降りたフェニクスは、そうしてまた上を仰いだ。
「降りてきていいぞ」
「えっとちょっと待ってください―――わ!?」
どこかに足を取られたか、錐もみしながら落ちてきたものをフェニクスが抱き留める。彼女の腕の中で気まり悪そうに笑みを浮かべたアヤネは、礼と共に覚束ない足取りで床に足を下ろした。もともとオペレーターの彼女に、細い通気口を長時間匍匐するということ自体重労働だったのだろう。そして、彼女は目の前の物を眺めて、気分が悪くなったのか背を向けて、自分の腕で自分を抱きしめると、微かに震えた。
「初めましてテロリスト君。御機嫌よう」
前に回ったフェニクスは、腰を屈めて下から睨むようにして男を見上げた。
「端的に尋ねよう。君たちの部隊の規模と目的、そしてその所属は何だ?」
「し、知らない。俺は末端の人間だ。そもそも知らされていない。それ以上俺が応えられることは無い」
「そうか―――まぁ規模と目的はおおよそは見当がついているから構わんのだがな。どうせ長いこと戦う積りも無いのだろう。それ以上はどうしても言えないか?」
「言えない」
クセノフォンは、腕の中の男を見下ろした。
屹然とした声色を出そうとしたのだろう、それでもその声は身体の震えが伝播し、明らかに怯えていることがわかる声だった。
そうか、と大層残念そうに肯いた後、フェニクスが顔を上げてクセノフォンに琥珀の目を向けた。
「偉いぞ」
フェニクスが男の頭を帽子越しに手荒く撫でつける。そうしてフェニクスが手を退けたのが合図だった。
クセノフォンは、1秒とかからずに男の首をあらぬ方向へと捻じ曲げた。鈍い声とともにぐったりと手足を萎えさせた。
「全く、ここはそれなりに重要な拠点だと聞いていたのだがな」
どっさりと音を立てながら床に転がった遺骸を一瞥する。
ニューエドワーズ基地司令部に襲撃があったのは、ネオ・ジオンによる輸送船襲撃の少し後だった。MPに扮した何者かによる襲撃―――散らかっている物を目に入れたクセノフォンは、混線していた無線通信の中で聞いた情報はどうやら事実だったらしいと確認した。
「最近物資の輸送関係で民間に委託していましたがそれでしょう。裏は前に言っていた連中でしょうか? それにしては訓練もきちんと熟していないようですが」
「相手もそう楽な状況ではないのだろうよ。だからネオ・ジオンに助けを求める―――アヤネ、ここらへんにトラッシュボックスはあるか?」
「ここらへんですか?」
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