71話
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同志なら出来ますよ)
「言ってくれるな」
言いながら、『ラケス』は機体ステータスに視線を走らせる。
悪くない―――いやむしろカタログスペックだけならば最高だ。連邦軍でMSのパイロットを始めてから、これほどのMSに乗ったことがあっただろうか?
だがその分乗りやすいというわけではない。この機体が所詮は試作機ですらない実験機なのは『ラケス』の知る所だ。そうして、実験機ということはそれだけ乗り心地は最悪であるということを意味する。性能が高かろうが、それを十二分に引き出せるかは全く別問題で、担い手と器の止揚が無ければただ宇宙を漂うガラクタと同義の存在になるに過ぎない。なまじの性能の高さはむしろ操作性の悪化の呼び水となり、振り回されるだけになる可能性とて、ある。
『ラケス』は薄く目を閉じた。そうして、アームレイカーに手を重ね、曲面の感触に触れた。
まだ1年しか経っていない―――そのことに、『ラケス』は奇妙な感覚を覚えた。
第二次ネオ・ジオン抗争。
あの時、自分はその光景を遠くで見ていることしかできなかった。
虹色の燐光の果てに燃え尽きる『ガンダム』。あの機体が、あの巨大な岩塊を押し返したのだ。
ガンダム―――――。
口にしてみればただの1単語でしかない。伝説でしかなかった存在など、所詮凡人の『ラケス』の人生には終ぞ関係のない存在だったはずだった。
なんの因果か、それが今は己の手の中に在る。あの伝説の力、神威の存在を、今は自分が振るい、歴史を変える―――。
所詮は何かの諸権力の《戦略=ゲーム》に従って、踊らされているに過ぎないのだろう。この機体とて、反財団関係の連邦政府高官の指図が無ければ手に入ることは無かった。そしたサナリィからも、連邦からも供与があるのだ。
「同志、今から立ち上がる。退避しろ」
服を外に脱ぎ捨て、コクピットの中にあったノーマルスーツを着込んだ『ラケス』は、己が乗機―――愛機が完全に稼働し得るところまで作業を終えると、外にいる筈であろう男に声をかけた。了解の復唱が返り、倉庫の屋外に出た通信が入ると、『ラケス』はそのMSを徐々に立ち上がらせた。
上に乗っていた牧草の山が崩壊し、ぎらと煌めく2つの瞳が中から覗く。そのまま倉庫の屋根のトタンを破壊しながら悠然と立ち上がったMSは、流麗な体躯を鮮緑の大地に確かな足取りで立ちあがらせた。
背部の2枚のウィングバインダーは、その大翼をゆったりと休める禽の如くであった。鷹の目を想起させる鋭利な視線はどことも知れぬ場所を射抜く。その翼に目つき、そしてその白と黒で覆われた外観は、さながら大鷲もかくやといった様子だ。
即座に機体ステータスを確認。問題は何一つないことを確認し、整備兵の男もここでスラスターを使っても問題ない距離まで離れているのを確認すると、『ラ
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