70話
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我に返ったクレイは、次の瞬間視界に飛び込んできた物体から逃れるようにして路面に倒れ込んだ。
道路に留まっていた他のエレカを薙ぎ倒す勢いで驀進してきた黄色いちゃちなエレカが歩道のガードレールを破壊し、ドリフトしながら歩道に突っ込む。何人かは車体に横殴りにされるようにして吹き飛び、スーツ姿の警備部隊を名乗った男は階段の角に後頭部を打って死んでいるらしかった。
ちょうどクレイのすぐ目の前で停止するや、車窓を開けると同時に見知った男の顔が覗いた。
「乗れ。此処は不味い」
オーウェン・ノースロップは特に色も無く、淡々と口にした。
「どうなってるんです、これ!? いきなり―――」
「早くしろ。死にたいか?」
オーウェンの鋭利な視線がクレイを射抜く。先ほど感じた死という体験の感覚とオーウェンの言葉が重なり、ぞっとしたクレイはエレカの後部座席のドアの取っ手に手をかけた。
ドアを開ける。エレアを先に乗せ、クレイもさっさとエレカの車内に飛び込むようにして乗り込んだ。
オーウェンがアクセルを踏む。車外から聞こえる、怒鳴るような声とアサルトライフルの銃声に身を竦ませながら、クレイはふと車窓から赤いものが目に入った。
女だった。先ほどクレイに銃口を向け、将に殺さんとしていた女―――。
銃を撃つ直前、オーウェンに頭を狙撃されたのであろう。
即死だったはずだ。死ぬということに付随する感情を感じる暇も無く、あの女―――少女とすら呼べたかもしれない女の存在は無化されたのだ。
ガードレールを再び破壊して、黄色いエレカが道路を逆走する。クレイは自分の顔に着いた女の血液を左手の親指で拭って、その存在の痕跡を恐々とした目で見降ろした。
※
モニカ・アッカーソンは、自分のしなければならないことを迅速に熟していた。
重要なデータの保存、重要でない―――あるいは最重要のデータの破棄。『何か』あったらすぐに動けるようにサナリィの上の人間から命令はあったが、よもや本当にその『何か』があるとは。自分に情報を伝えたサナリィの上層部の人間―――ジョブ・ジョンとか言ったか―――あの男は、『これ』を知っていたのではないか?
疑念を抱きつつ、予想していたより素早く事―――デスクの上のあらゆる電子機器をハンマーで徹底的にたたき壊すという原始的且つ堅実な作業―――を為したモニカは、額の汗を腕で拭うと、手のひらの上の3cmほどもないカプセルを見下ろした。
保存すべきデータは全てここにある。唾液を飲み込んだ後、目を瞑ったモニカはそのカプセルを一飲みにした。
咽喉を異物が通っていく感触。つまりかけ、もう一度飲み込んだモニカは、涙を滲ませた。
これで仮に自分に何かあっても、データが流出する恐れはない。その上、十数時間後には
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