70話
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る。
シナリオを考えているのが男なのであろうから、そういう所に気が付かないのは仕方ないのだろうが―――。
クレイにも生体的に一生理解できないであろう出来事を想像していると、するするとエレアの右手がクレイの左手に絡まっていく。
指の第二関節で互いの指を保持するのは、彼女の手が小さいからぎゅっと握ると圧迫感があるからなんだとか。
まぁ、それは良いのだが―――クレイはその微かな彼女の存在を感じながらも、恐る恐る周囲に視線をやった。
『魔法少尉パンツァー☆彡りいな』は割と色々な層から支持があるらしく、幼女もいれば20代のキャリアウーマンと言った風采の女性もいたり。
そして、例によって『彼ら』もいる。その『彼ら』から浴びせられるどこか鋭い視線も、その理由はよくわかる。クレイもついこの頃はそちら側の人間だったからだ。
かといって優越があるわけでもなく、クレイはその映画館のあるフロアを気まずい気分で抜け、映画館のあるビルを出た。
「あ! 見てよ!」
エレアが黄色い声を上げる。
「―――おお」
空を見上げて、クレイは思わず声を失った。
黒い空からふわふわと降ってくる白い物体。それを手に取って見れば、微かな冷たさが肌を摘まんだ。
「雪?」
手に落ちた断片を見下ろして、手を握る。溶けた塊は温い液体が残るばかりだった。
もう一度空を見上げ、その降りしきる白い塊をまざまざと目に焼き付けた。
「わー! わー! キレー!」
手を離したエレアがぴょこぴょこと跳ねるようにして階段を下りていく。まるで初めて雪を見たかのように目を輝かせて花が咲いたような笑みを浮かべる少女の後を追って、ビルから道路へと降りていく数段ほどの階段を降りる。
ほう、と息を吐けば、白いもやのようなものが口から立ち込める。初めてでこそないが、クレイにとっても雪というのはそう多く経験するものではなかった。最近では雪中行軍の演習くらいなもので―――。
些末な思い出だ。そんなことよりも、道路の広い歩道でぱたぱたと跳ねる少女の姿の方が、重要だった。
降り始めた雪に驚いたのか、足を止めた人々が空を見上げる。そんな中、無邪気に雪を喜んでいる少女の姿はどこまでも無垢だった。
スニグラチカのように白い肌はしっとりと広がる雪原のように美しかった。長い銀の髪は、幽かに響かせながらしとしとと降る雪のようだった。
サイド3の時は、彼女は熱砂の上にいた。それでも似合っているな、と思ったが、こうして淑やかに降りしきる雪の下で楽しげにする少女の姿を見れば、やっぱりエレアには雪が似合うんだなと思う。
流石にちょっとだけ寒いかな、と思うほどには寒さを感じる。街行く人々は雪に目を白黒させるのもつかの間、ぶると身体を震わせるとそそくさと足早にコンクリートを歩いていく。
「ね
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