69話
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は礼の微笑と共に帽子を取って頭を下げると、足早にクレイの元を去って行った。
「―――なんだったんだ?」
独り言ちる。まさかこんな天気だからといって雪の心配をするというのも変な話だし、かといって季節外れの雪が降るほど寒くもないし―――。
はて。
あの紳士(Der Herr)は中々の厚着をしていたような気がする。そう言えば、さっきの少女もコートを着ていたような。
釣られるようにして、男が去って行った方とは反対側―――少女の背を追うようにして、クレイは遠望するように視線を投げた。当然、もう少女の姿は無かった。
それでも探すように視線を向けていると、ぽすん、と脇腹を何かが打擲した。
顔を向ければ、頬を膨らませたエレアの姿があった。
「そんなにさっきの子とえっちぃことしたいの?」
ぷー、と頬を膨らませながら、エレアの紅い目がクレイを見上げる。
「い、いや、そういうわけではないのだが…」
「まぁ、別にいいけど。気にしないし」
腰に手を当て、少し呆れた表情をしながらも、エレアの顔には瞋恚の余韻も無かった。それに安堵しながら訂正しようかと思ったが、止めた。それよりも、クレイは彼女の服装が目に入ったからだった。
マフラーに首を埋めた少女は、コート姿だった。軍用のそれではなく、モスグリーンのコートは明らかに私服だった。
彼女もコートを着ていた。道路の先を歩いている人を見ても、厚手の服を着ているのだから実際寒いのだろうか―――。
に、しても。
「前から聞きたいことがあったんだが―――」
「ん? なに?」
「いや、女の人でよく上コートなのに下の防御低い人多いけど、どうなってるのかなぁと」
エレアの姿を上下に見てみれば、太腿ほどまでの長さのコートから伸びる足は膝の上までが露出していて、それから下は真っ黒だった。所謂オーバーニーソックス、という奴である。
「あぁこれ?」ぺちぺちと足を叩くエレアが意味深な笑みを浮かべる。
「これタイツなんだよ」
ほら、と丁度白と黒の境目ほどを摘まんで引っ張ると、確かに黒い布地と一緒になって白い部分―――というか、透明な部分が吊られて小さな稜線を描いた。
「はぁ〜こんなのあるんだな」屈むようにしてまじまじと見てみると、確かに肌の部分だと思っていた場所はタイツを穿いているようにどこか膜が張っているような質感だった。太股の下半分あたりから着色する一方で、上は無着色にしているというわけだ。
「今日はちょっと寒いから流石に穿けないよ」
眉宇を寄せて苦笑いするエレア。クレイは、エレアのそのモスグリーンのコートを意識した。
「―――今日ってそんなに寒いかな」
「え? うーん、結構寒いと思うけど……」
エレアがクレイの姿を見遣る。
うーん、と人差し指を口に当て、ころんと彼女が首を傾げ
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